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最新人材マネジメント情報

「目標管理」を位置づけ直すことで組織の問題を解決する

■成果主義の文脈にはまってしまった目標管理

皆様の会社において、「目標管理」の運用は最近いかがでしょうか?

個人ごとに目標を立て、目標の達成度を評価し、評価結果に応じて処遇に差をつけることを狙う評価制度は、「目標管理」制度と呼ばれ、「成果主義」人事制度の流れの中で導入されたり、強化されたりしてきました。それはマネジメント手法としても定番のものとなり、手法の中身も充実化されました。すなわち、「経営目標をブレークダウンする、BSC(バランスド・スコアカード)の4つの視点(財務、顧客、内部プロセス、学習と成長)からの目標設定」や「SMART(Specific,Measurable,Alligned,Realistic,Time-bound)の視点での目標明確化」や「目標達成へのコーチング」等の手法が、多くの会社・職場に定着することになりました。

そして、その故にかえって、その後の目標管理の位置づけは、「成果主義」の文脈の中にはまってしまい、目標管理は、成果主義人事制度と運命を共にすることになってしまったと思われます。つまり、「成果主義」人事の弊害として、「視野のタコツボ化・短期化」や「職場の一体感の喪失とモチベーションの低下」等が指摘されるようになりましたが、目標管理はそれらの原因であるとも見なされるようになりました。そして、それら弊害として生じた問題については、目標管理では解決できない問題として、別途、解決法が考えられることになりました。

しかし、ここで目標管理の原点に立ち返るならば、目標管理はもともと「成果主義」の文脈とは無関係だったのであり、本来はむしろ、「全社的・長期的思考」や「モチベーション向上」を狙うものであったことがわかります。目標管理を位置づけ直し、運用を調整することで、本来の狙いを達成しましょう。以下、そのポイントを述べてみます。


■全社的・長期的思考のための目標管理

目標管理の元祖は、やはりピーター・ドラッカーであったと言われています。すなわち、1954年に著された名著「現代の経営」の中で、ドラッカーは「目標による管理」(Management By Objective)の意義を高らかに歌い上げているのですが、そこでは、「経営方針を上から一方的に伝えるのでは十分とはせず、下から目標を設定させてみることで、経営方針が正しく実現されようとしているかどうかを検証する、コミュニケーション手法」として位置づけており、手法というよりも、経営の哲学であると言っています。

「目標による管理」は本来・・・
・トップダウンとボトムアップとを融合させて、企業の一体感を作り出す。
・経営トップが現場視点から学びを得て、経営方針を見直す。
・現場を経営に参画させてモチベーションを高める。

そのような本来の意義を尊重するならば、一人一人が立てる目標が経営目標のモレダブリのないブレークダウンになるように枠をはめすぎたり、また、目標がSMARTに記述できることに拘りすぎて、ビジネスの現場での問題意識を表現することが避けられるのならば、本末転倒であると言えるでしょう。逆に、「社員一人一人がどのような目標を立てたのかを公開し、お互いに見えるようにすること」が、重要な要素になるでしょう。

また、目標達成度の評価も、「達成度によって人事考課の評定をすること」こととは切り離し、「当初立てた目標と実際に起こったこととの差異から学習すること」、「差異について個人ではなくチームで振り返ること」が鍵になるでしょう。


■モチベーション向上のための目標管理

さらに、目標管理を、モチベーションを高めるツールとする鍵は、目標設定の視点を、会社目線から個人目線へ、すなわち、会社業績の視点から個人のキャリア形成の視点に移し替えることにあります。DeNA創業者の南場智子さんが、昨年の講演にて、創業チームが最初のサービスを立ち上げた当時の高揚感を振り返りながら、次のような面白いことを言われていました。

マネジメントで一番大変なことは、メンバー個々によるモチベーション源泉の違いである。創業メンバーそれぞれのモチベーション源泉は異なっていた(「お金」「創造」「顧客満足」「歴史に名を残す」)。しかし、全員で、「チームで共通の目的を達成したときの高揚感」を共有できた。たとえ一人一人のモチベーション源泉は異なっていたとしても、一人一人オーナーシップをもって仕事に取り組み、目標を掲げ、それを達成したときの高いレベルの喜び、純粋な高揚感を味わうことができるようにするのならば、全員のモチベーションを高めることは可能である。
(南場智子氏の「2013年グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット」における講演書き起こし(http://matome.naver.jp/odai/2137283171836034701)より要約)

つまり、一人一人のモチベーション源泉は異なれど、「目標を掲げて達成すること」は、万能のモチベーション向上手法であるというのです。ただし目標の内容が何であるか、ということは、一人一人のモチベーション源泉に応じて、異なってきて当然でありましょう。新しいサービスを世に出すことができた、という事実は一つですが、その内面的な意味づけは、それぞれによって異なってきます。

「お金」の人にとっては・・・ ビジネスモデル実現が見えた!
「創造」の人にとっては・・・ モノを作り出せた!
「顧客満足」の人にとっては・・・ 顧客の反応が来た!
「歴史に名を残す」の人にとっては・・・ これは確実に世界初だ!

「モチベーション源泉」とは「こうありたいと願う自己像」のことに他なりませんが、それは、「キャリア形成にあたって譲ることのできない拘りの能力や価値観」である「キャリア・アンカー」とも同じことになります。すなわち、「モチベーション源泉」と「キャリア・アンカー」とは一致します。よって、モチベーション向上に向けての目標設定にあたっては、まず自らのキャリア・アンカーを意識するとともに、そしてキャリア・アンカーに応じた目標設定をするのがベストと言えます。一人一人、8種類のどれかに帰着するとされるキャリア・アンカーに応じて、目標設定の内容には次の内容が含まれるべきでしょう。

<キャリア・アンカーの種類> → <目標設定の内容>
1.管理能力発揮 → チームを仕切る役割を果たし切る。
2.起業家的創造性 → 小さくても一つ新しいサービスを出す。
3.自律的な業務遂行 → プロセスを改善し仕事の独立性を高める。
4.ライフスタイル → 仕事をマニュアル化し共有する。
5.安心・安定 → 他者を支援することで互恵関係を作る。
6.サービス・社会貢献 → 顧客の満足の声を得る。
7.専門性発揮 → 特定の専門的テーマを磨いて価値を生む。
8.純粋な挑戦 → 特定の難易度の高い課題をクリアする。

また、それぞれのキャリア・アンカーの持ち主は、そのようなキャリア・アンカーの持ち主であるがために組織の中で果たすべき固有の機能や役割、存在理由を持っている筈であり、そのような機能発揮をとらえて目標を設定することもできる筈です。そうすれば、会社の視点と個人の視点を容易に一致させることができます。

<キャリア・アンカーの種類> → <固有の機能> → <掲げるべき目標>
1.専門性発揮/純粋な挑戦 → イノベーション → 品質・機能目標
2.サービス・社会貢献/起業家的創造性 → マーケティング → サービス納期の目標
3.管理能力発揮/自律的な業務遂行 → オペレーション → コスト・生産性目標
4.ライフスタイル/安心・安定 → 組織維持 → 安全・リスク低減についての目標

いずれにせよ、今後の目標管理運用の大きなテーマは、会社方針の視点と一人一人のキャリア形成の視点とを「目標設定」の中で結びつけることにあると言えそうです。


プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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