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人事制度改訂を考える前に徹底して行うべきシミュレーション

シミュレーションを通じて問題を浮かび上がらせ、解決策を考える

人事制度改訂にあたって必要になることとして、要員構成や人件費のシミュレーションがあります。制度を改訂するとその効果はどのように現れるのか、ということはきちんとシミュレーションする必要があります。

しかし、制度改訂を前提にすることなく、採用数、昇格数から評価分布に至るまで、人事運用の様々なパラメータを変えてみながら、今後10年間の人員構成や人件費の推移をシミュレーションし尽くすことによって、隠れていた問題も浮かび上がり、様々な問題解決策も示唆され、結果として制度改訂ということを考えなくてすむことになる可能性が高いのです。よって、シミュレーションに日頃から親しむことには、極めて高い価値があると言えます。

10年以上前人事制度改訂がブームだった頃には「制度改訂の前提ありき」であったがゆえに簡単にすまされがちだったシミュレーションのプロセスを見直し、各年の採用数から昇格率、昇給率、評価分布、賞与割合、ポスト数、退職率に至るまで、人事運用のパラメータを変えてみてはその帰結を見通せるプログラムを再構築する中で、そのような確信を強めました。

<要員構成や人件費のシミュレーション>

 

資格等級を増やしたくなる誘惑に負けない

人事制度改訂への誘惑として、「資格等級」を増やしたくなるということがあります。2000年前後に大規模な人事制度改訂を通じて、硬直化した処遇を打破すべく資格等級を大ぐくりにし、役割や成果に応じて処遇を柔軟に設定できるようにしたものの、時とともに、結局新制度の枠組みの中で処遇は高止まりするようになり、あらためて下げることもできず、総人件費の制約の中では上げることもできず、処遇が硬直化してしまい動きがとれない・・・というケースは多いように思います。そのような場合に、資格等級を分割することによって、再度活性化を図ろう、というのは魅力あるアイデアです。次の図のような具合です。

<資格等級の分割による問題解決>

 

しかし、この発想の問題は、2~3年後、せいぜい数年後には同じことになってしまう、ということなのです。10年後を見据えるならば昇格や昇給はどの程度に押さえなければならないか、どのようにメリハリをきかせなければならないか、ということを突き詰めることなく、昇格や昇給による当面のモチベーションアップに安易に頼り続ける結果、制度運用の身動きがとれなくなっていくわけですので、そのことにメスを入れずに人事制度をいじっても、目先の解決にしかなりません。

10年後がどうなるかということに焦点を当てて、採用数や採用方法の変更、職種転換の促進、早期退職プログラムの拡充など、あらゆる方法を考え、それによって要員構成や総人件費がどのようになるか、ということを見極め、資格等級制度を中心とする人事制度運用にとらわれない選択肢を大胆に考えるべきなのです。

ほとんどの場合、シミュレーションをすればするほど、成熟した国内環境において、ビジネスの大きな成長を見込めない中では、これまでの延長上での昇進・昇格を続けることはできない、ということが見えてくるでしょう。

あらためて取り組まれるべき成果主義

その中で、あらためて成果主義ということが取り組まれるべきことになるでしょう。成果主義とはPay for Performanceということ、すなわち自らが上げた成果を原資にして自らの報酬を受け取る、というもので、必ずしも昇進・昇格の原理ではありません。しかし、そのような本来の意味での成果主義を実現するためには、一人一人の仕事の自律性を高め、自己完結できるようなものにしてゆくためのプロセス改革や組織の改革が必要です。10年前の成果主義はそこでつまずき、変質してしまった現実がありました。

しかし、10年前とは様変わりした今のITの技術は、そのようなプロセス改革や組織改革を可能にしている筈です。10年前の合理化の時代は「センター化」、すなわち、受注処理、顧客サポートといった機能を集約・共通化・センター化することで、コストの圧縮と規模の利益を追求した時代でした。それにより、全体としてコストは削減されたものの、「一人で自律的に営業して受注してサービスを提供して顧客満足を得る」一連の流れはいったん分断され、結果として、「一人一人がどれだけ付加価値を生み出したか」ということを計測することは難しくなっていった時代でした。合理化がかえって、成果主義を難しくしたと言えます。

しかし、そのような合理化は行き着くところまでいき、別会社化されるものは別会社化され、アウトソースされるものはアウトソースされ、時代は再び分散と自律に向かっています。すなわち、顧客接点の現場にはタブレット端末への情報供給を通じて力が与えられ、「提案から受注処理からアフターサービスまで」を一人の担当者の元で一貫して顧客に提供できる状況が整ってきている会社が多いのではないでしょうか。集中化から再び分散と自律へ・・・そのような今こそ、成果主義が再度見直されるべき時かもしれません。

そしてその時、その成果主義の担い手たる社員のモチベーション源泉としては、昇進・昇格ではなく、「自律・独立」や「顧客へのサービスの喜び」や「起業家精神の満足」や「分散オフィスで地域に密着して仕事ができる仕事と生活の一体化の実感」をモチベーション源泉として自覚するように仕向けていくことが重要になると思われます。10年前の成果主義には、そのようなモチベーション源泉の問い直しと再定義は欠けていたところでした。

いずれにせよ、現状の制度運用問題を解決しよう、という発想だけであれば、制度に手を入れて手直しする考えになりがちですが、シミュレーションを通じて、中長期的視野で事実と向き合うことで、視野を広く持って、新しい道に踏み出すことができる場合が多いと思われます。



プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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