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最新人材マネジメント情報

タイプや適性は一人一人が選び取ってゆくもの

性格検査、コンピテンシーの次に来るもの

人材タイプというものがあります。マネージャータイプ、専門職タイプ、企業家タイプ・・・これはどのようにして決まってくるのでしょうか?

古典的には、「性格」ということが言われ、性格検査がよく用いられました。「外向的」「内向的」「感情的」「思考的」・・・MBTI診断等を受けられた方もいらっしゃるでしょう。採用検査として有名なSPI適性検査もその系列の中にあるものと言ってよいと思います。「内向性」「活動性」「自信性」・・・

近年では、「生まれもっての性格」というよりは、仕事の実際の場面で効果的に振る舞うことができるか、その強みや弱みに着目することが主流になっています。「行動特性」「コンピテンシー」等と呼ばれるものです。「規律性」「対人順応性」「行動を起こす早さ」「達成への拘り」「分析的思考力」「創造的な発想力」・・・等々。それによって、特定の仕事や役割において成果を上げるために必要な思考や行動と、本人が得意な思考や行動とを、きめ細かくマッチングできるというわけです。最近自己啓発の文脈でよく用いられる「強み診断」もその系列です。性格検査の時代よりはずいぶんと進化したと思います。

さて、では今後はどうなるか、なのですが、最近は、人材タイプの議論は、より内面的に深く「モチベーション源泉」や「キャリア観」をとらえる方向に移ってきたように思います。その背景として、能力があるならばふさわしい役割を与えれば発揮できる、という前提では人事の問題を扱えなくなっている、ということがあるように思います。単に能力面のフィット&ギャップを見るのではなく、持てる能力を生涯にわたって持続的に発揮できる根源的な強さがあるか、ということも併せて見る必要が出てきているのです。


アスリートとしての適性はコンピテンシーではわからない

その背景には、ビジネスパーソンもアスリート化しつつある、ということがあるように思います。誰もが経済成長の分け前に預かることは今後はできず、さらに「成功」できる人はごく一握りであり、成功する/しないは単に能力の問題ではなく運も含めた「その人の全て」によるものであり、常にトレーニングを続けながら勝負し続けることが求められ、そして仮に「成功」しなかった場合にも、自分を敗者とは思わない心の割り切りが必要である・・・

職業人生がそのようなものであるとすると、職業選択とは、単に仕事を選択するというよりも、仕事をするために人生において何を犠牲にし、何を取るか、という、人生への取り組み方そのものの選択となる筈です。会社から見ると、人材活用とは、人材を適材適所で配置するというよりも、あらゆる面から一人一人のポテンシャルを見極めながら、人を選びとってゆくようなものになる筈です。

能力開発は大切なことですが、支援者や運を呼び寄せる姿勢ということも含めた、生涯にわたって一貫した「何か」、売れたからといって市場からあっという間に消費し尽くされて丸裸にされてもなくならない、付け焼刃ではない「何か」が問われる、と言ってよいと思います。


キャリア・アンカーという概念

昨年から、キャリアとモチベーションに焦点を当てたサービス提供を始めています。その中で取り上げている概念が、「キャリア・アンカー」という概念です。キャリア・アンカーとは、職業生活上の様々な選択の場面において「それだけはあきらめたくないという関心や価値」のことであり、生涯を通じての「アンカー=拠り所となる職業上の自己イメージ」のことであり、たとえそこから離れる選択をしてもいつか「そこに引き戻されるもの」であり、それは歳とともに安定的になってくるものである、とされます。キャリアに関して最初に本格的・体系的な研究を行った、エドガー H・シャインが提唱した概念です。

キャリア・アンカーには次の8種類があるとされ、しかも、一人一人のキャリア・アンカーはこのどれか一つに決まる、とされます。キャリア・アンカーが、「他のものはあきらめてもそれだけはあきらめたくないもの」であるとすると、必然的に一つに定まることになります。(出典:「キャリア・アンカー - 自分のほんとうの価値を発見しよう」 エドガー・H. シャイン著,白桃書房)

●管理能力 ── 組織の中で責任ある役割を担いたい。
●専門的能力 ── 自分の専門性や技術を高めたい。
●保障・安定 ── 安定的に1つの組織に属したい。
●起業家的創造性 ── クリエイティブに新しいことを生み出したい。
●自律と独立 ── 独立・自律した仕事の進め方を保ちたい。
●サービス・社会献身 ── 社会を良くしたり他人に奉仕したりしたい。
●純粋な挑戦 ── 解決困難な問題に挑戦すること(を望むこと)。
●ライフスタイル ── 個人的な欲求と、家族と、仕事とを調和させたい。

人生の中で選びとってゆくもの

このキャリア・アンカーの理論的基礎ははっきりしません。それは、単なる才能ではなく、単なる根源的な欲求でもなく、単なる譲れない価値観でもなく、「才能・能力・動機・欲求・態度・価値」が合わさったものだ、というのです。

そして、キャリア・アンカーの種類はなぜ8つなのか?この8つだけなのか?8つの間にモレ・ダブリはないのか?8つのキャリア・アンカーの間にはどのような関係があるのか?・・・全くもってわかりません。理論化を考え、結局は性格類型が反映されているのではないかと考え、性格類型との対応関係を整理しようとしても、うまくいきません。

つまりキャリア・アンカーとは、客観的な基準で判定できるようなものではないのです。人生の中で出会う仕事の様々な要素と、人生の様々な局面とがからみあう中で、徐々に選びとられ、形成されてゆくようなものなのです。

「専門分野への関心 ~ 最初に就いた仕事の幅や深さ ~ 見出された才能 ~ 会社の期待 ~ 経験の蓄積 ~ 期待される役割の変化 ~ 家族の人数 ~ 仕事以外の趣味の深まり ~ 知識の陳腐化 ~ 能力の衰え」・・・これらが絡み合う中で、例えば「海外転勤を受け入れるか否か」といった選択肢が立ち現れ、一つの可能性を取り、別の可能性を捨てる中で、それまで漠然と思い描いていた自己の将来像と現実とで一致する部分、一致しない部分が明確になり始め、それらに折り合いをつけ、職業人としての自己像が明確になってくる・・・そのようなものなのです。

おそらく、これからの時代、個人にとって一番大切なことは、何を犠牲にして何を選ぶのか、そのことを自覚することであるように思われます。そして、選びとった道において、誇りを持てるようにすることであると思われます。

●「専門的能力」への拘りで生きるのならば、社内調整能力の発揮が求められるポジションへの昇進・昇格の道はきっぱりと諦める・・・昇格が遅いからといって気に病まない・・・その代わり、専門家ネットワークの中では尊敬されるよう、真剣に取り組む・・・
●「自律と独立」への拘りを捨てられないことがわかったならば組織人としての通常の成功はきっぱりと諦める・・・その代わり、自分流で仕事をする人としての、普通のサラリーマンにはない、お洒落で尊敬されるようなスタイルを築くことに全力を注ぐ・・・
・・・

挑戦の場を失った時、人は輝きを失い始めます。企業としても、今後は、社員一人一人が自分の人生を選びとることを支援するような人事を行ってゆかないと、最終的には、行き場所とプライドとモチベーションを失った人材をますます抱え込むようになってしまうのではないかと思われます。



プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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