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女性の活躍推進の2つの異なるアプローチ

ご存知のように、アベノミクスの3本の矢の3本目は「成長戦略」、そして「成長戦略」の3本柱の一つは「女性の活躍」です。安倍首相のスピーチでは、「役員に一人は女性を登用」「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度」・・・と数値目標も。

しかし、それに向けて何をするか、ということに関しては、2つの全く異なるアプローチがあるように思います。会社によって、あるいは時と場合によって、全く異なるものが目指されているように思います。そのどちらを採るかによって女性活躍推進の仕方は大きく異なることになると思われます。逆に、これまで女性の活躍推進が進まなかったとしたら、それは、2つのアプローチのどちらを採るのか、はっきりさせていなかったからかもしれません。


性差を超越したいのか、活かしたいのか

7月2日に、日本経済新聞社主催の「グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット」で、DeNAの創業者南場智子氏の素晴らしい講演がありました。それは、新サービスを世に出すという情熱、チームで共通の目的を達成したときの高揚感の前では、男女だとか、性格の多様性だとか、モチベーション源泉の多様性などというものは大した意味を持たなくなり、超越できてしまう、というお話でした。・・・そういう激しさがなければ、新しいものは世に出ず、経済成長もないのかもしれませんが、しかし、多くの「普通の」会社が「女性の活躍推進」ということで目指しているのは、そういうことではないと思われます。

女性の活躍推進とは、共通の目的に向けて、男性と女性の区別をなくし、男性女性まったく隔たりなくがむしゃらに仕事ができる環境を用意し、目標を達成することに同じように達成感を感じ、同じように処遇されることができるようにする、価値の「一元化」のことなのでしょうか?それとも、男性と女性の異なる価値観や働き方をそれぞれに推し進める、価値の「多元化」のことなのでしょうか?

女性を指導的地位により多く引き上げていくとはどういうことでしょうか?日本の大企業において女性を「役員」に登用するとはどういうことでしょうか?女性にもこれまでの「男性総合職」と同じようなキャリアを歩ませ、役員にまで育てていくということでしょうか?(=管理職の女性比率自体がまだ高まっていないところ、時間がかかりそうです。)それとも、「女性一般職」の中からも、彼女らの視点と利害をしっかり経営に反映できるよう役員チームに登用していくことでしょうか?(=それならすぐにでもできそうです。)


男女でコンピテンシーやモチベーション源泉は異なるか

「話を聞かない男、地図が読めない女」・・・ではありませんが、男女の違いについてはいろいろなことが言われます。男女の脳には生まれつき、生物学的な差異があるというのです。曰く、「女子は言語能力が高い」「男子は空間認知力が高い」「女子は聴覚が優れている」「女子の見るものと男子の見るものは違う」「男女は記憶の仕方が違う」「男女は感情の処理の仕方が違う」・・・(参考文献:「なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか:中井俊己著:学研新書」)

わかるような気はしますが、果たして、ビジネスに直結する違いが本当にあるのでしょうか?・・・そこで、ビジネス上の能力であるコンピテンシーの尺度で見た場合には、男女はどのように違うのか、ということを考えてみました。いろいろなケースを思い浮かべながら感覚的にコンピテンシー評価をしてみたのですが、確かにコンピテンシー的に言って、男女のどちらが高い/低いということはないが、強み/弱みの傾向はあるように思われます。360度評価等でも、一般的に、このように男女の違いが出る場合が多いです。

【男性の強みコンピテンシー】 「概念化思考」「組織の理解」「組織へのコミットメント」

【女性の強みコンピテンシー】「秩序・クオリティ・正確性への関心」「対人関係理解」「顧客サービス」

能力面だけではなく、ビジネスパーソンとしての価値観やモチベーションという面ではどうでしょうか。何がモチベーションの源泉かということは、「キャリア・アンカー」という概念を用いてとらえることができます。キャリア・アンカーとは、人がキャリアを選択するにあたって譲れない拘りのことです。(参考文献:「キャリア・アンカー:エドガー・シャイン:白桃書房」)

【男性が持ちやすいキャリアアンカー】 「管理能力」「起業家的創造性」

【女性が持ちやすいキャリアアンカー】 「サービス・社会貢献」「ライフスタイル」

キャリア・アンカーの論によれば、「管理能力」や「起業家的創造性」の持ち主は、報酬として、金銭、昇進、ポスト、裁量等を重視すると言われます。また、組織との同化も強いため、「転勤」も苦にしないと言われます。一方、「サービス・社会貢献」「ライフスタイル」の持ち主は、報酬として、金銭やポストというよりも、顧客や上司や同僚から認められ、支持されることを重視すると言われます。そして、生活基盤が揺らぐ「転勤」は脅威になります。

このように、ビジネスパーソンとしての違いを生みだすコンピテンシーやモチベーション源泉という角度から見ても、男女の違いというのは、確かに存在する、と言えそうです。そして、その違いを一言で表現すると、やはり、という感じではありますが、能力的にもモチベーション的にも、男性は「軍人」的、女性は「看護婦」的なのです。


もし軍人と看護婦が家を売るビジネスを始めたとしたら

こうしてみると、企業において従業員の性差をどう扱うかという問題は、戦場の軍人達と看護婦達が戦争が終わったので日本に帰ってきて一緒に家を売るビジネスを始めたとしたら、どのような体制で家を売ったら成功するか、ということであると言えるでしょう。大きく、次の2つのパターンが考えられます。皆様の会社では、どちらを進めようとされているでしょうか?

【A:元軍人と元看護婦の混成チームを組む】 元軍人と元看護婦を区別することなく混成チームにして、軍人も看護婦も両方が活躍できるようなプロセスで家を売る。展示場をフル活用して展示場にお客さんを呼び、お客さんが家族で来たら、旦那さんには軍人が対応して不動産市場の動向の話をし、奥さんには看護婦が対応して台所の話をする、等。

【B:元軍人は元軍人で、元看護婦は元看護婦でチームを組む】 元軍人チームと元看護婦チームとに分けて、それぞれが得意とする別々のプロセスで家を売る。元軍人チームは訪問販売中心で注文を決めてくる売り方。元看護婦チームはモデルハウスにお客さんを呼んで相談コーナーで対応する売り方。

この結論はどちらか一つに一概に決まるわけではありませんが、女性の活躍推進の進め方は、ビジネスモデルやビジネスプロセスと一緒に考えなければならないことがわかります。そしてこれはさらに、これまでの雇用慣行や労動文化を維持するのか、捨てるのか、ということにも関わってきます。


これまでの強みとなってきた雇用慣行や労動文化を活かすのか、捨てるのか

Aのように、軍人と看護婦が一緒に働く混成チームを作るためには、出産という大きなライフイベントの制約がどうしても大きい女性に合わせてプロセスや制度、労働慣行を設定しなければなりません。長時間残業の慣行はなくさなければなりませんし、業務プロセスが特定の人に属人的に依存してしまわないよう、仕事の標準化を進める必要もあるでしょう。チームメンバー間で適宜お互いの仕事のカバーをできるようにしておく必要もあるでしょうし、誰かが出産休暇に入っても仕事を回せるよう、ある程度余裕をもって労働力を調達できるようにしておく必要もあるでしょう。

そして実はそれは、従業員が性差に関係なく働けるようにするため、というだけでなく、グローバル化のためにも不可欠になるということが指摘されています。様々な価値観の人が働けるように、仕事は仕事と割り切り、労働時間等について、誰もが参加できる一定のルールの中で仕事を行えるようにすることで、国籍を問わず多くの人が企業に参加することができるというのです。

原則として仕事は一日8時間の中で終えるべきとなれば、これまで属人的に抱え込んでいた仕事を他者に割り振ることができるようにしてゆかなければなりません。軍人にとっては、自分の命を危険に晒して戦っていた時代に比べて給料は下がるかもしれません。しかし一方、属人的営業が科学的なマーケティングにとってかわり、業務プロセスもシステム化が進み、これまで採用することができなかった多様な人材を採用できるようになり、ビジネスの大発展の基礎ができあがるかもしれません。グローバルな発展が始まるかもしれません。軍人たちが、「自分達一人一人が命をかけて仕事をしなければこの会社は回らない」と思い込んでいたことこそが、実は事業の成長の頭打ち要因であった、ということさえ見えてくるかもしれません。

一方、軍人達からは、もっと自由に働きたい、これまでそうであったように仕事に命をかけたい、それができなければこれまでのような業績は上がらない、このビジネスはうまくいかない、という苦情が出てくるでしょう。結果として、Bのように、元軍人は元軍人、元看護婦は元看護婦で、それぞれの強みを活かしてそれぞれの働き方をした方が、組織としての業績は上がるかもしれません。

日本企業が終身雇用を前提にする以上、「男性総合職社員」に求められてきた長時間労働と会社命令での一方的な転勤をなくすわけにはいかない、という指摘もあります。というのは、クビを切らないことを前提に最初から正社員の数を最小限にしておき、ビジネスの増減は残業の量や配置転換で吸収する、というのが、日本企業のビジネスモデルの一部だったのであり、終身雇用を前提にする限り、それを崩すわけにはゆかない、というのです。

多くの日本企業のこれまでのやり方が軍人型のビジネスプロセス・組織運営であったとすれば、そのやり方を無理に変えるよりは、看護婦型の新しいビジネスプロセス・組織運営を元看護婦が中心になって組み立て、従来のやり方に付加していく方が早く、効果が大きい可能性も高いでしょう。


男女共学がよいのか別学がよいのか

男女混成チームがよいのか男女別々のチームがいいのか、という議論は、学校において男女共学がよいのか、男女別学(=男子校・女子校、または男女別クラス)がよいのか、という議論と同じであることを最後にご紹介したいと思います。男女共学と別学では、どちらの方が学業成績が高まり、また、リーダーシップ能力が高まるか、という議論です。学校のクラス運営は企業組織運営の縮図とも言えるかもしれません。

男女共学がよいのか別学がよいのか、ということについては、まだ学問的には結論は出ていないようですが、男女共学か別学かという議論には長い歴史があり、また、短いサイクルで実験ができるためその結果を比較する研究も多く、組織運営と性差の問題を扱う上での知見の宝庫と言えそうです。

少し考えると、男女共学の生徒の方が、異性の存在に早くから慣れ、性差にとらわれずに活躍できるようになりやすそうなものですが、必ずしもそうではなく、男女が一緒にいるとかえって、男子は男子の役割を、女子は女子の役割を演じようとするようになり、男女の役割分担に関する固定観念が早い段階で現実化することにもなってしまうそうです。一方、男女別学であると、女子の中からもリーダーが生まれるし、男子も女子任せにしないで家事のような雑事にも普通に取り組むようになるそうです。

そしてさらに、女性だけでクラスを作ると、リーダーシップには多様な姿がある、ということが見えてくるのだそうです。例えば、男子クラスにおいて、構想(ヴィジョン)を提示することがリーダーシップの重要な要素ですが、女子クラスにおいてはそうではなく、また、リーダーシップとは「リードする側とフォローする側の役割分担」にある、ということがより見えてくるのだそうです。

「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3点セットで組織を動かす、というのはマネジメントセオリーの定番ですが、もしかしたら、そのセオリーは男性社会固有のものだったのかもしれません。女性だけの企業があったとしたら(=寡聞にしてそのような企業があることを知りませんが)、その組織運営のあり方は、これまでの普通の企業とは大きく異なることになるのかもしれません。そして、マネジメントの概念の多くが、根底から見直されるようなことにもなるのかもしれません。

参考文献:「男女共学・別学を問い直す:生田久美子編:東洋館出版社」



プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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