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会社が求める「人材像」はいくつ?・・・複線型人事の今後

「人材像」の多様化は進むか

人事、人材育成の仕組みを検討するにあたり、常に重要になることは、「求める人材像」を定義することです。「人材像」と照らしあわせて「採用」をしたり、「育成」をしたり、「評価」をしたりするからです。「人材像」を伝えることで、社員の日々の仕事の仕方やキャリアの築き方が方向づけられます。

そこで問題になるのは、「人材像をいくつ想定するか」ということです。皆がマネージャーを目指し社長を目指す、ということではないでしょう、ということです。また、営業人材と技術の人材では「人材像」が異なっていても当然でしょう、ということです。人材像を複数提示する、というのは、人事制度的には「専門職制度」「職群制度」「複線型人事制度」等に対応します。

従来の日本企業においては、よく言われるように、新卒一括採用された社員は、全員がゼネラリストとしてローテーションを繰り返しながら、生涯をかけて組織ラダーを登る競争をしていくことが一般的でした。「人材像」は基本一つだったわけです。

では今後の方向性はどうか。今後は人材像は複数になる/多様になる、という考え方が主流だと思います。その理由は沢山考えることができ、考えれば考えるほど深い理由も多いです。

●専門性がますます深化している。単に知識や技術が複雑になったというだけでなく、専門性の方向性によって、異なる価値観や思考回路が求められる。
●多様な人材を受け入れるために、多様な働き方、多様なキャリアに対応できる必要がある。労働力として女性や外国人を登用するため、というだけでなく、新しい商品やサービスを生むためにそれが必要である。
●低成長の中ではマネージャーポストを増やすことは難しい。
・・・

私も、今後は複数の人材像を想定した多元的な人事が主流になると考えてきました。経済産業省が音頭をとってIT業界で推進されてきた「ITスキル標準」に示された複線型のキャリアモデルなどは、全ての業界で使うことができる雛形を与えるスグレモノだと考え、提案のために活用したりもしてきました。


むしろ一つの求心力ある「人材像」が求められている

しかし過去数年を率直に振り返ると、そのような多元的な人事の方向に人事は進んでゆく、というビジョンの元での提案は、なかなか人事実務の中に浸透することはありませんでした。日本企業において、専門職制度の内容が拡充されて多様な人材開発が進む、ということにはなりませんでした。むしろ、逆なのです。グローバル企業においては、「一つの人材像」としての「全社員共通のリーダーシップモデル」を推進するプロジェクトが明白に主流となってきました。そして、世界の中で存在感を増している企業においては、「人材像の求心化」が際立っているといってよいのです。

●Facebook創業者マーク・ザッカーバーグは、自社の開発者文化を「ハッカーウェイ(The Hacker Way)」として宣言し、「人事やマーケティングのような、プログラミングが主な仕事ではない職種についても、プログラマーを採用する」と語った。
●P&GのCEOアラン・ラフリーは、「P&Gの社員は、創造力と規律をもってイノベーションを着想し管理する方法を知っているイノベーションリーダーである」と、自社の社員のことを定義し、そのメッセージを社内外に徹底して発し、全社員に、イノベーションリーダーとしてのコンピテンシーモデルを示した。

このような「人材像の求心化」の動きは、今も進行中であると感じます。もちろんそれは決して多様性を抑えこむ、というものではなく、多様性を束ねるための求心力を重視し、その求心力に力を入れる、ということです。


なぜ人材像は求心化するのか

今後の企業人事は多元的な人事になる、と考えた私の読みは、どうやら当たっていたとは言えないようです。何故だったのでしょうか?列挙してみると、これも一つ一つ、考えれば考えるほど深いです。

●複数の人材像を提示したところで、従業員はどの人材像を見ればよいのかわからない。
●複数の人材像を同じ比重で推進できない。複数の人材像とそれに伴う育成、処遇、コミュニケーションを、同じ比重で進めることは、効果的でも効率的でもない。
●多様性を管理するよりも、求心力を管理する方が効果的・効率的である。多様性は管理するものではない。
●職群間をまたがって人を異動したり、スキル・能力を調達したりする優れた仕組みが存在するかというと、必ずしも存在しない。自社にない専門性を調達するならば、外部から調達する方が速い。市場に勝る仕組みはない。

要は、人材活用を一つの会社の中で考える必要はなかったのです。求める人材像が異なるならば、別の会社にしてしまった方がよいかもしれない。サービス担当、マーケッター、インフラ屋、技術専門家・・・多様な人材を一つの会社の中でマネジメントする仕組みを考えるならば、別の会社にしてしまった方がよいかもしれない。

現在の競争の圧力、ますます効率化する(リソースを調達する)市場の力を正面から受け止めるならば、そのように考えるべきでありましょう。ますます一つの人材像に集中すべき。もっともっと特化してゆくべき。


全員をリーダーにする

さて、複線型人事は今後どのようにしてゆくのがよいでしょうか?人事上の区分は雇用形態や処遇等の事務上の区分のためにそのまま残すとして、社員へのメッセージは求心力の方に舵を切るのはいかがでしょうか?全員にリーダーを目指させる、全員にリーダーとしての責任を与えてゆく・・・マネージャーと呼ぶかどうかはともかくとして。しかしそこで、実際にそのようなリーダーポストを作れるのか、という問題が浮上します。

そこで、ポストはどんどん作ることができる、という話を紹介したいと思います。パソコンの流通で一つの時代を築いたデル・コンピュータの創業者、マイケル・デルの語りです。マイケル・デルが、自らの半生とデル・コンピュータの歴史を語った『デルの革命 「ダイレクト」戦略で産業を変える』(日本経済新聞社、2000年)は、今読んでも様々な示唆に満ちた本ですが、そこにおいてマイケル・デルは、リーダーポジションは増殖する、という組織哲学を語っています。市場を細分化(セグメンテーション)すれば、そこにリーダーを必要とするポジションが生まれ、しかも、細分化すればするほど顧客ニーズが具体的に見えてくるため、成長機会を見い出すことができる、というのです。

●セグメンテーションという考え方は、デルの組織哲学。
●デルでは一人のマネジャーが担当する顧客セグメントは一つだけ。
●マネジャーが成功すると、その褒章として責任範囲を縮小する。事業部や製品組織、機能別の部署を何らかの方法で分割する。
●セグメンテーションを進めれば進めるほど、私たちの集中力は高まり、製品やサービス、サポートを、各セグメントに合わせて個別に調整できるようになる。
●セグメンテーションを使ってポストを増やしていけば、社員に新たな刺激と成長の機会を与えることができ、それと同時に、これまでより狭くなった責任範囲により鋭く集中できるチャンスが与えられる。
●デルでは、「集中」の強化は、ほぼ必ずと言っていいほど、さらなる成長を意味する。
●そのおかげで、私たちは社員の幸福と成長を守り、しかも高い成長率を維持することができるようになった。

もちろん、デル・コンピュータの話は市場自体が急成長していたことを背景にしていますので、すべての業界に必ずしも当てはまらない、ということもあるとは思いますが、我々はこのように発想を変えるタイミングに来ているのかもしれません。




プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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