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統計を用いて自社の「言葉」を見出す

前回に続き「統計学」の話です。人事で今後活用が進むことが予想される質的統計学。


バリューやコンピテンシーはどこの会社でも同じようなものになる?

社員全員で共有すべき価値観(バリュー)や、重視する能力(コンピテンシー)を、簡潔な文章としてまとめておき、育成や評価の際に参照することで、浸透を図る、ということは一般的に行われ、人事運用の重要な部分となっています。

さて、そのようなバリューやコンピテンシーの内容は、どの会社でも実はそれほど大きくは違わないのではないか、という議論があります。たいがい「顧客志向」「成果志向」「チームワーク」といったところに落ち着くのではないか。手間暇かけて自社独自のものを作り込む必要はないのではないか。どこの会社でも通用する一般的・普遍的なものを用いれば、かえって妥当性も検証されているし、他社比較もできるし、よいのではないか。・・・ということはよく言われるところです。

「いえいえ、一見それほど違わないようで、小さな違いが、実は会社の価値観やビジネスモデルを反映するところですから」等々ご説明しつつ、実際、いざ物ができあがってくると、自社におけるフィット感がどんどん気になり始めるものですので、結果的に、各社ごとに文言の隅々まで時間をかけて作り込むことになっていくものです。

さて、この議論においても、「統計学が答えを与える」ということが言えるのです。統計手法を用いることで、自社においてフィット感がある言葉を生み出すのみならず、そのフィット感が単に感覚的なものなのか実際に根拠があるものなのか、データで裏付けを与えることができます。

今後はそのようにしなければなりません。ある言葉が自社における重要なものを語っているかどうか、ということは、社員は直観的にわかるものですが、そのことを定量的に証明して、自信をもって言葉の使用を推進し、定着化させてゆかなければなりません。


リーダーシップの要素はつまるところ仕事系と人間系の2軸?

自社のリーダー層の資質として求められるものは何でしょうか?「仕事を推進する力」と「人間的な配慮をする力」の組み合わせであると言えないでしょうか?その2つを備える人をリーダーとして選抜すべきだし、また、この2つを備えることができるように次世代リーダーを育成すべきではないでしょうか。・・・これは大変に説得力がある議論で、しかも、2軸で特性を捉えるフレームワークというのは、一人一人の特徴をとらえる上でも、育成の方針を立てる上でも、人の組み合わせを考える上でも、大変に使いやすいものです。

実は、リーダーシップ能力を、「仕事を推進する力」と「人間的な配慮をする力」の2軸で捉えるというのは、リーダーシップ理論における標準的なセオリーです。PM理論と言われるものがその理論で、故三隅二不二氏によって、学問的なきちんとした調査を経て打ち立てられた理論です。PM理論によれば、リーダーシップの機能は、P機能(Performance function:目標達成能力)とM機能(Maintenance function:集団維持能力)とから成り立ち、この両方の機能を発揮できるのが良いリーダーである、とされます。

では、このPM理論は自社においてもそのまま当てはまるのかどうか・・・そのことを、360度フィードバックの結果データを用いて実際に検証してみることができます。それは実際に行ってみるべきでありましょう。実際に因子分析を行ってみると、ほとんどの場合、PM理論で言う2軸が見出されます。しかし、その「中身」をよーく見ると、会社によって、ニュアンスの違いがあることが見えてきます。そこがポイントです。


その会社の言葉宇宙を統計的にとらえる

例えば、次のようなケースがありました。リーダーシップの要素として、確かに「仕事型」と「人間型」に相当する2因子が見出されるのですが、それぞれを構成する項目に特徴があり、下図のような独特な項目が並ぶのです。そしてそれは明らかに、その会社ならではのリーダーシップのスタイルを反映しているものでした。

 

その会社では、社員一人一人が自律的に動くことが奨励され、徹底した仕事指向であるとともに人間的な魅力も発揮して周囲の人々を巻き込むことは、そもそも当然のことのように求められていました。そこへあらためて、リーダーシップの要素を「仕事型」「人間型」と分解して表現することは、メッセージとしても後退した印象を与えてしまう・・・では、これを何と呼んだらよいか・・・

「仕事型」「人間型」ではなく、「先導型」「後押し型」と呼ぶことが相応しかったのです。全員が自律的にスピード感を持って仕事を進めることが奨励されている会社において、「仕事型」か「人間型」かというように、行動を「名詞的に」要素分解してしまうことは、会社のカルチャーに反することでした。むしろ、個人が会社のダイナミックな動きにどう関わるのか、「先導する」のか、「後押しする」のか、というように「動詞的に」語ることが、その会社に相応しい言葉遣いであったのです。

このように、その会社の価値観はどのような言葉宇宙の中に成り立っているのか、そこで重視されているのは何か、外してはいけないものは何か、ということがあり、その言葉宇宙にフィットする形でバリューやコンピテンシーの言葉を組み立てなければなりません。そのために統計が役立つ、ということは興味深いことと思われませんか?




プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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