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人と組織の成長が描かれたドラマ

商品のクオリティやサービスのレベルがどんどん進化するのと同じで、企業小説のクオリティも進化しています。現在、最先端のクオリティを誇る企業小説は池井戸潤氏の筆によるものである、という説が有力ではないでしょうか。昨年直木賞を受賞しドラマにもなった「下町ロケット」は、小説・ドラマとも非常に素晴らしいものでした。大田区の中小企業が、知財訴訟をふっかけられるという危機に向き合い、またロケットエンジン開発への参画という飛躍へのチャンスをモノにする過程で、登場人物一人一人が成長するとともに、組織全体としても成長する、という物語ですが、一人一人の成長物語だけでなく、それが組織としての成長物語ともなっていることが画期的でした。個人とともに組織全体の成長過程を描いた小説やドラマ、というのはこれまでなかったと思われます。

結果として、リーダーシップとモチベーションに関わるほとんどの重要なポイントが「下町ロケット」という小説・ドラマには含まれていると思われ、これまで私が仕事をさせていただいたことのある企業の情景が思い出されてあっちでもこっちでも涙が出てしまうくらいリアルで素晴らしかったので、教材に仕立てて勉強会をしてみました。ドラマの鍵となる場面を抜き出して一緒に見ながら、気がついたことを話し合う、という形式です。

そうしてあらためて、個々人の成長と組織の成長が一体となる有機的なプロセスを学ぶには、ドラマという形式が一番だと確信しました。というのは、そのプロセスのポイントを箇条書きにしたところで多岐に渡り、しかもポイントの中には相互に矛盾するものも出てきます。たとえば、「リーダーは謙虚でなければならないが、同時に、毅然とした強さを持っていなければならない」・・・といった具合ですが、これを言葉で読んだところで、わかったようなわからないような、で、学びよう、実践しようがありません。これを、ドラマの主人公の姿を通して、主人公の視点に入り込むことで、仮想体験的に学ぶことができる、というわけです。そのような意味からは、小説にも増して、ドラマが有効だと思われます。

もちろん、そのためには、そのドラマのシナリオが十分にリアルで、しかも、ドラマの登場人物を演じる俳優が、登場人物になりきっていなければなりません。つまり、全身全霊をこめたシミュレーションである必要があるのです。そして、下町ロケットのドラマは、それだけのクオリティを備えていると言ってよいと思われます。優れた小説やドラマや映画は、フィクションであることを超えて、その登場人物は人々の心の中に現実に生き始める、ということがよく言われます。司馬遼太郎が描く明治維新の英雄達の振る舞いが日本人にとっての生ける歴史になってしまったことなど、その一例でしょう。池井戸作品は、平成の日本の企業社会を写し出したものとして、そのようなものになりうるかもしれません。

そして、そこから導き出されるメッセージは、やはり、「夢=ヴィジョン」が鍵だ、ということです。「夢=ヴィジョン」を口にするだけでは足りないが、しかし「夢=ヴィジョン」が、人と組織を変えるプロセスの起点になること。そして、その「夢=ヴィジョン」が実効性を持ち、一人一人を変え、そして組織を変えてゆくための条件と道筋がある、ということです。1990年代に、瀕死だったIBMを復活させたルイス・ガースナーは、その回想記「巨象も踊る」の中で、次のように語っています。とても深い文章ですが、これとほとんど同じことを、ドラマの一人の主人公の視点に自らの視点を重ねることで仮想体験できるのは有難いことです。DVDで入手できますので、是非皆様もご覧になってください。

モチベーションを引き出すためのレバーとは何だろう?
異なる人々は、異なるものによって、モティベートされる。ある人々は「お金」によって。ある人々は「昇進・昇格」によって、ある人々は「周りから認められること」によって。
そしてある人々にとっては、最も効果があるのは、「恐怖」あるいは「怒り」だったりする。別の人々にはそういうものは全く効かず、逆に、「学習機会」であったり、「インパクトを与えることのできる機会」であったり、「自分の努力によって永続する成果が生み出されることを見届ける機会」であったり、が最も効果がある。
そしてほとんどの人々は、「滅びる恐怖」によってならば突き動かされる。そしてほとんどの人々は、「将来に関する生き生きとしたヴィジョン」によって息を吹き込まれる。
この10年間、私はこれらのレバーのほとんどを引いた。
(Who Says Elephants Can't Dance?: Inside IBM's Historic Turnaround Louis V. Gerstner P.203より筆者訳)

Rocket Drama



プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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