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会社を立て直すセラピー・・・「会社人としての自己」と「個人としての自己」に折り合いをつけるために

心の底からの情熱を再構築する必要

言うまでもなく、怒涛のように進行し続けるグローバリゼーションとIT化の中で、私達の会社も、社会も、国家も、立て直しが求められているわけですが、そのためにどうするか・・・会社の立て直しであれば、会社の「コアコンピテンシー」を明確にして、事業の「集中と選択」を行い、社員の「能力再開発」を行う・・・というセオリーがあるわけですが、こういった、会社視点でのセオリーでは最早不足であるように感じられます。

もっと突き詰めた「何か」が必要であると感じられます。その「何か」とは何か・・・前回の当コーナーで書いた「全員が根っからのコア社員であること=フェイスブック社においてはハッカーであること」もそうでありましょう。

そのことも含めてなのですが、問題の本質は、「会社人としての自己」と「個人としての自己」の関係の再構築が必要、ということにあると言ってよいと思います。

会社で仕事をするにあたって、個々人の「心の底からの情熱」を再構築する必要があるのです。


個人の才能/人格の深いところからコミットしないと価値を生み出せない

そのような再構築の必要があるのは、一つには、社員と会社の間の信頼関係が揺らいでいる中では、社員は安心して仕事に集中できないから、ということがあるでしょう。現在、若年層、高年齢層のどちらにおいても、社員が会社との信頼の距離感をつかめなくなっており、おかしなオーラを発散させてしまっている光景が見られないでしょうか?

若年層
極端なお揃いのリクルートスーツに象徴されるように、極端に会社の価値観に迎合しつつも、会社が自分にキャリアを与えてくれるとは決して信じておらず、自分探しと自己啓発に拘り続けている。

高年齢層
昇進昇格の頭打ちや、リストラクチャリングに伴う不本意なポジションへの異動の中で、「自分は本来こうではないのだ」と葛藤を抱え、といって辞めたところで再就職もままならず、不機嫌さを発散させながら組織の中に居座っている。

このような状況の中では、「社員が一丸となって知恵を出し合う」状態は生まれず、よって会社と個人との間の信頼関係を回復させる必要があるわけですが、それ以上に、つまり単に回復させる以上に、「会社人としての自己」と「個人としての自己」とを再定義して、強固なものにする必要があると考えられます。これまで以上に、個人の才能/人格の深いところから仕事にコミットしないと、世界で勝負して付加価値を生み出せるだけのエネルギーが生まれないからです。

・ 新興国のアグレッシブな人材が費やしているのと同じ時間を注ぎ込まなければならない。
・ 長じてから後天的に身につけた知識やスキルではなく、自分の本当の才能を使わなければならない。
・ そして、本気・本心で取り組むことで、内なるエネルギーを開放しなければならない。

「一人称で」語り合うことによって会社生活を各個人の中に定位させる

では、そのような、「会社人としての自己」と「個人としての自己」の折り合いを、どのような方法によってつけることができるのでしょうか? 加藤雅則氏は、『自分を立てなおす対話』という著書において、会社での問題や悩みを徹底的に個人の文脈で「一人称で」語り合うことによって会社生活を自分の人生の中に定位し直すとともに、それを共有することで新たな共通感覚=企業文化を作ってゆく、そのようなセッションの事例を多数紹介されており、それらは大変に示唆に満ちています。

紹介されている事例は、いろいろな事情で充実した会社生活を送れなくなった人が元の元気な姿を回復する、という治療的な事例にとどまらず、未来を向いて一人一人の姿勢を鍛え上げ企業文化の土台を固める、という事例を含んでいます。例えば、研究開発型化学メーカーC社において、研究開発力の土台を立て直す「発明道場」の事例がそれです。(以下、同書P.135以下より)

「自社の研究開発力は根枯れを起こしているのではないか?」という危機感を動機に、研究開発部門トップ自らが主宰者となり、若手の研究者に対し、発明・発見の基本を伝授しようというもの。

そのために、若手研究者である参加者達が、自らの研究観、自分の追いかけたい研究テーマを、自らの言葉で、研究者としての大先輩であるシニア・フェロー達の前で語り、シニア・フェロー達の本音でのガチンコのフィードバックを受ける。

「あんたは、研究者なんか?それとも作業者なんか?」

次に参加者どうしで、自分の受けた衝撃を語り、聴いてもらう。他の参加者の体験も聴くことで、言われた内容が少しずつ腑に落ちてくる。「そもそも、自分はなんで研究者になろうと思ったのだろう?」という内省の扉が開く。

セッションの回が進むにつれ、話し合う内容は具体的な研究開発上の悩みに移る。参加者でグループを組んで、一人一人が研究開発の過程でぶつかっている悩みを打ち明け、グループのメンバーから率直なフィードバックを受け、また、グループのメンバーがその人の代わりに知恵を絞ってあげる。それを聞くことで、自らを囲っていた壁に気づき、壁を脱出する。

このようなプロセスを通じて、その組織独自の共通感覚が明らかになり、活性化される。例えば、C社では、「研究者」という言葉が社内では独自の響きを持っていた。「それでもお前は研究者か?」 「研究者として、お前、このままでええんか?」・・・その内容があらためて問い直され、一人一人の中で新たに定位する。

トップ研究者であるフェローの役割は、形式的なノウハウを伝授することではなく、「一人称の語り」を主導することにある。

セラピーの手法を「組織レベル」「社会レベル」で

今日本の会社で必要とされているのは、まさにこのようなことではないでしょうか?会社視点で組み立てられた問題解決方法を、会社視点で社員に「実行せよ!」と言っても、本気で実行される時代ではなくなりました。その前に、社員一人一人の人生にとって会社で働くこととは何なのか、ということが規定され直されなければならない、しかもそれは、日本の会社員が猛烈に働いていた80年代よりも、さらに深耕された、より個人の能力や価値観の深いところに根ざしたものでなければならないのです。

加藤雅則氏が提示している手法は、ソーシャルワーク分野で開発されてきたナラティブセラピーに基づいているとのことですが、そのほかにも、精神医学分野で開発されてきた心理療法/精神療法の手法が取り入れられていることがわかります。「治癒と立て直し」が、組織レベル、社会レベルで求められている今、まさにセラピーの手法を、組織レベル、社会レベルで取り入れる時に来ているのかもしれません。

なお、弊社サイトの対談シリーズも、特にそのようなことを意識して始めたものではないのですが、そのような組織や社会のニーズの中に位置づけられることに気づきました。人事プロフェッショナルにキャリアや人事観を一人称で語っていただくことで、「本気の人事」ということを見直す・・・そのような試みとしてお読みいただければと思います。



プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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