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最新人材マネジメント情報

ビジネスモデルとメンタルモデル

前回の当コーナーは、西に代打をお願いしました。子供の成長からの視点・・・いかがでしたでしょうか。これからもしばしば西が登場すると思いますが、よろしくお願いいたします。さて、私自身としては久しぶりの更新となります。なかなか更新できなかったというのは、お陰様でプロジェクトにかかりきりであった、ということもあるのですが、現在のビジネス・経済・社会の状況を前に、何をどのような方法で論じたらいいのか、ということについて、考え込んでしまっていた、ということもあります。

「ビジネスモデルの変化と、個々人に求められる役割や能力の変化とを、一体的に語れる枠組みを手に入れよう」・・・といった議論をこれまでしてきたわけですが、それを今現在、「成果とスキル・コンピテンシー」という枠組みで十分語れるのかどうか?「ビジネスモデルの変化に伴う新しい役割の定義~育成~適材適所の配置」という枠組みで十分語れるのかどうか?

高品質の製品とサービスを生み出す、日本企業の壮絶なまでの現場力はますます健在である一方、日常生活を振り返ると、「何でもアマゾンで購入するようになり」「交友関係はfacebookの上で整理するようになり」「日々の情報活用プラットフォームはiPhoneにまとめ」「頭脳はgoogleに半分預けてしまうようになり」・・・と、米国発のビジネスモデルに生活の核心の部分が組み込まれる状況が進んでいます。社内の人材育成や配置の改善をしている間に、我々の生活もビジネスも米国発の新しい仕組みに取り囲まれ、また、新興国に追い上げられています。

どうやら、もっと根本的なところから考える段階に来ている。子供が生まれた瞬間から才能を注意深く観察して合ったロールモデルを与えるとか、次の次の世代まで見据えて子供達を育てる場所から変えるとか、人材は日本よりも海外で採用して日本に連れて来るとか、そのために英語を公用語化するとか、既存の企業とは違う土俵で人材を輩出するベンチャー支援環境を整えるとか、そういうことが必要な段階に来ている・・・実際、私達一人ひとりが子供達の将来を考える際には、そのような考え方をするようになっていると思います。

具体的な方法はいろいろと考えられますが、いずれにしても必要なのは、ビジネスモデルが変わる中で、「人材がどう変わることが求められているのか」ということの核心をとらえることです。スキルやコンピテンシーよりももっと深いレベルの「世界観、人間観、仕事観、労働観、キャリア観、人生観」、すなわち「新しいビジネスモデルに対応する新しいメンタルモデル」を定義することが必要です。そのためには、歴史的、社会的、文化的、心理的な深層にまで立ち入る必要があるかもしれません。


日本企業の職場の変化を、働き手のメンタルモデルの変化の側面からとらえようとした文献は多くはありませんが、心理学の視点から労働問題を論じてきた大野正和氏が、『自己愛(わがまま)化する仕事―メランコからナルシスへ』(労働調査会)という書籍において、働き手の自己像が「メランコ型」から「ナルシス型」に変化している、という指摘をしています。

● 従来の日本的職場は、職場に視点を置き、職場の目を常に気にし、迷惑をかけまいと頑張る「メランコ仕事倫理」に支えられてきた。
● 一方、90年代以降、自分に視点を置き、市場の目を常に気にし、目立ちたいと頑張る「ナルシス仕事倫理」が台頭してきた。

そのような変化が、職能主義から成果主義への転換への背景にあると大野氏は指摘します。それは因果関係が逆だとは思いますが、しかし、「職場のIT化や商品のデジタル化が、働き手が仕事や職場や顧客に向きあう仕方を根本的に変えている」可能性、そして、「メランコ型旧人類とナルシス型新人類との間に断絶が生まれ、それが、一部のメランコ型社員の尋常ならざる負担やそのメンタル面への脅威を生ぜしめている」可能性は考えてみるべき点だと思います。

自己愛(わがまま)化する仕事―メランコからナルシスへ
大野正和
労働調査会

この論の延長としては、揃いのリクルートスーツに身を固めて就職活動を行う新卒生の怯えているかのような姿勢は、彼ら/彼女らが、会社から受け取る「メランコ型人材を求めるメッセージ」と、市場から受け取る「ナルシス型人材を求めるメッセージ」との狭間で身動きのとれない、ダブルバインド状況(=矛盾を強いられる状況)にあることを表している、ということもできるでしょう。

長い時間をかけて徐々にリストラクチャリングを進めている日本企業の大部分の職場においては、なお「メランコ型仕事倫理」が優勢と思われます。だがその仕事倫理に支えられた現場力も、デジタル化を通じた圧倒的なビジネスモデル変革力の前に、また新興国の成長エネルギーの前に、その威力を失ってきています。

日本の得意な携帯電話を大変な勢いで置き換えつつある新しいスマートフォンを創造したスティーブ・ジョブスは、2005年のスタンフォード大学卒業式における有名なスピーチにおいて、「価値ある仕事をするために、決して妥協することなく自分が本当に好きなことを探せ」と、「自分探し」を強く奨めています。



また、グローバル化を進めている日本企業の雄の一つである関西ペイントの河盛社長は、日経ビジネス誌のインタビューにおいて、日本人に欠けているビジネスの感覚とは何かという問いに答えて、「会社を一人称で語れるか」「我社の利益を・・・なんて切り出したら絶対にあかん」「俺にも儲けさせろ、と渡り合わないと相手にしてくれない」・・・と語っています(2011.12.5号)。

スティーブ・ジョブスの勧めも、河盛社長の要求も、従来型の日本企業の職場においては受け入れがたいものだと言えるでしょう。しかし、それくらいの仕事観/職業観/会社観/キャリア観の転換こそが必要とされている・・・。ビジネスモデルの変革はメンタルモデルの変革なしには着手できないということ、そしてそのことを明示することから全ては始まるということは言えるのではないでしょうか。個人レベルにおいても企業レベルにおいても。


プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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