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「学習のリサイクル」(番外編)

”人を育てる”という意味では、会社での人材育成も子育ても共通する部分が多いとよく言われる。
実際に、人事部で人材育成に携わった方で、そこで学んだエッセンスを自分の子育てに活かして、立派なお子さんを育て、両方の経験から学んだ”人を育てる”エッセンスを基に、子育てママを対象にしたブログや相談サービスを展開した方もいらっしゃる。

「子供を育てるような気持ちで、部下に接する」という面はもちろんだが、子供の様子を見て、成長のあり方や人間関係などの基本を改めて感じる場面も多く、それは会社での人材育成にも活かせるように思う。お子さんのいらっしゃる方には、思い当たるケースも多いのではなかろうか。ここでは、そうした例を1つご紹介したい。

共働き家庭の増加を背景に、最近では保育園の利用が増え、入園待ちの待機児童数の多さがニュースになるご時世となった。我が家もご多分にもれず、0歳から保育園を利用し、4歳を迎える年には幼稚園に転園するという経験をしたのだが、そこで子供の興味深い変化が表れた。

保育園では、0歳から就学前までの年齢の異なる子供が、同じ敷地内で長い時間を共有する。私たちがお世話になった園では、最長で7:30から19:15までの時間、昼間は年齢別の部屋で、朝と夕方は年齢を問わず(乳児は別室だが)同じフロアで過ごしていた。「このフェンスから向こうは赤ちゃんのお部屋」「赤ちゃんには優しくしてあげること」といったルールが生活の中で自然に身に付き、園庭や行事などで接する機会を通して、一人っ子の娘もいつしか、年下の子のお世話が好きな「お姉さん」ぶりを発揮するようになっていた。
兄弟もおらず、年の違う友達と遊ぶ機会も少ない娘にとっては、大変有り難く、大切な事を教えていただいた訳だ。

4歳になる年にマンモス幼稚園に転園し、同じような時間帯を同年齢の子供たちと過ごすようになった娘に変化が表れた。「赤ちゃんがいないから、つまらない・・」とぼやくようになったのだ。 確かに、年中・年長の年上の子供と接する機会は(少なくなったとはいえ)あるものの、自分が最年少になってしまった訳で、これまで「お姉さん」ぶりを発揮していた娘にとっては、自分の立ち位置や振る舞いをどうしたらよいのか、戸惑いを感じたに違いない。

思えば保育園では、0歳・1歳の赤ちゃんを見て「私はもう大きいんだから、こんな事もできちゃうよ」と彼女なりに難しい事にチャレンジしたり、年下の子のお世話をしては鼻を膨らませて喜んだりしていた。「自分ができることを赤ちゃんに教えてあげたい」→「教えてあげたいから、自分はもっと色々できるようになりたい」という好循環がいつの間にか子供の心に生まれていて、それが彼女のやる気の原動力になっていたようだ。

こうした好循環は、子供にのみ生まれるものではない。「教えることで自分が成長する」とはよく言われるが、部活でも会社でも、先輩・後輩の間で多くを教え、学びあうことはOJTの基本である。

そうした育成のあり方をある意味で極めたケースが、スターバックスコーヒーかもしれない。多くの店舗を展開するスターバックスは、店舗での接客やコミュニケーションについてマニュアルがないことでも知られている。スターバックスならではの「究極のホスピタリティ」を実現するために、ミッションに基づいて、自主性や創意工夫を引き出すように動機付けがされている。

そうは言っても、店舗運営のために多くのスキルを身につける必要はあり、OJT、OFFJT共に長い時間を要する教育プログラムは存在する。マニュアルレスの現場を支える育成制度の根幹をなすのは、「ラーナードリブン」(Learner Driven=自ら学ばせる)という発想。本人がその行動の理由を考え、理解し、納得した上で行動できるようにしている。マニュアルによって決められた行動をするのではなく、その状況に最も適した言動を自分で判断できる人材を育てているのだ。アルバイト・社員に関わらず、プログラムの内容は同じで、アルバイトであっても一定の経験を経た後は指導役に挑戦させる(「学習のリサイクル」)。教えることで、その内容が本人に定着すると考えているそうだ。「教える」経験を踏むことで、プログラム内容をより深く理解するのみでなく、その上のレベルへのチャレンジ意欲が高まり、結果として低い退職率(社員・アルバイト共に)やイキイキとした現場の実現につながっていると考えられる。

「教えてあげると、喜んだり感謝される」「もっとやりたい」このサイクルの源泉は、3歳の子供にも芽生える、人としてごく自然な感情なのだろう。それ故に、非常に強いモティベーションとなって、その人の成長を支えるに違いない。評価のあり方、報酬の与え方、モティベーションの高め方・・・会社での人材育成となると、こうした手段をつい難しく考えがちだが、普段の生活の中で人の成長の基本を改めて感じる機会になった。




西 珠海(にし たまみ)
株式会社HRアドバンテージ シニアコンサルタント

▪株式会社三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、アンダーセン・コンサルティング(現:アクセンチュア)、マーサージャパン株式会社、外資系事業会社を経て現職。
▪日系企業/外資系企業の組織・人事制度改革、各種制度導入支援、各種データ分析業務の経験多数。
▪早稲田大学第一文学部(社会学専修)卒。プリマス大学院 社会調査修士号取得、ロンドン経済大学院(LSE) 労働経済修士号取得。




プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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