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最新人材マネジメント情報

社会への価値創造がビジネス存続の要件となる時代

以下、ある意味、ポスト大震災、というテーマの続きです。企業戦略論のグルの頂点に立つグルとして名高いマイケル・ポーター教授が、この2年ほど新しい機軸を打ち出しており、今年に入ってから、それを強くメッセージ化してビジネス界に提案する論考を、ハーバードビジネスレビュー誌を舞台に展開しています。

 Creating Shared Value   How to reinvent capitalism
 http://hbr.org/2011/01/the-big-idea-creating-shared-value/ar/1
 (探せば全文もウェブの中にあります。)ビデオやスライドはこちら。
 The New Competitive Advantage: Creating Shared Value
 http://www.isc.hbs.edu/Creating_Shared_Value.htm#video

グローバルなテロや金融危機を受けて、経済活動・企業の存在意義が根本的に問われるようになった、という危機意識の元に始められた論考のようですが、日本においても、今回の震災(とりわけ原発事故)を通じて、経済活動に起因する巨大リスクに社会が直面するようになっていることが顕わになったことで、この提案の切迫性が一気に増したように思います。


どういう提案かというと、従来のCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)を超えて、これからはCSV(Creating Shared Value=社会との共通価値を作り出すこと)が問われなければならない、というのです。一見、特に新しいわけでも、驚きの要素があるわけではない、平凡な提案であるようにも思えますが、論調はかなり激しいものです。(ついでに、グルの中のグルのポーター教授のプレゼンテーションというのが、グル然としていない、自分の思考を助けるかのような身振り手振りの多い、熱いものであることも興味深いです。)

従来のままでは企業活動は社会にとっては「問題」を生じさせるものであることが明らかになり、企業活動の正当性(legitimacy)が失われた(has fallen)、とすら言っているのです。「問題」については、従来は経済の外部性の問題として、その解決は政府に委ねられ、あるいは、CSR活動を通じた社会貢献という形での企業の自己満足で埋め合わせる方法がとられていたが、今後は、企業活動自体を正当(legitimate)なものにするために、「社会の問題解決を企業目的に組み込まなければならない」、というのです。それが、継続性ある経済活動の必要条件になる、というのです。「良い企業戦略とは社会的な次元をそのなかに含む」と言っています。ビジネスと社会が共通の価値を作り出しWin/Winになる王道を見出すことができる筈である、としています。企業活動をそのように見直すことで、資本主義を再創造する、と言っています。

事例としては、例えば、ネスレが、中米にプレミアムなコーヒー栽培農家を育成することで、中米農業社会の強化に貢献するとともにネスレ自身の商品の付加価値を高めている、という事例等が挙げられています。あるいは、短期的なコスト削減を求めて無闇に海外にアウトソースせず、地元にスキルを蓄積していくことで、変化に強い企業体質を作る、といったトヨタみたいな話も出てきます。(教授は、自分のビジネスだったらどういうことが該当するか、考えて欲しい、考えた結果をメールで送って欲しい、といった具合に熱いです。)


「社会との共通価値」は、次の各レベルで創造されるとしており、つまり、マーケティングから、プロセス開発から、雇用まで、全企業活動的に見直されるべきことになります。
 ●商品・サービスそのものの価値
 ●生産性が高く環境にもやさしいプロセスの価値
 ●地域社会発展との一体化

この視点に立つと、人材マネジメントにもおおいに変化がもたらされることが想定されます。つまり、「共通価値の創造への貢献」が人材価値の評価軸になることになります。
 ●共通価値創造の見地から、事業やサービスのアイデアを考えることができるか
 ●共通価値創造の見地から、顧客の評価を得ているか
 ●共通価値創造に向けて、自分の関わるプロセスを改善できるか
 ●共通価値創造という存在目的に沿った仕事の仕方をしているか(=「良い仕事」をしているか)
そして、それに合わせて、採用、育成、評価、登用等がなされることになります。例えば研修一つとっても、「社会との共通価値を創造するために自部門は、自チームは、そして自分は何ができるか」ということを話し合うような研修から始まることになるでしょう。

プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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