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最新人材マネジメント情報

ビジネスの論点と人事・組織の論点の大統合時代(続き)

前回は、「マーケティングを学ぶ」という教科書をご紹介し、同書におけるような優れた枠組み(フレームワーク)を設定するのならば、それを超フレームワーク(=メタ・フレームワーク)として活用し、マーケティング主導の企業を実現するための効果的マーケティング施策と、それに関わる組織開発や人材開発のテーマとを、同じ枠組みの中で整理することができ、それにより、どのようなマーケティング施策を導入すべきかということのみならず、それに伴い組織構造や人材調達や組織文化をどう変えていくべきかということも同時に検討することができる、ということを述べました。

同書で用いられた枠組みというのは、「市場⇔組織」「計画⇔マネジメント」の2軸で切り分けられた4象限の枠組みであり、下図のように表現されるものでした。(下図における軸の解釈及び並べ方はHRアドバンテージ流にアレンジしています。)

そして、マーケティング主導企業を実現するための重要な施策は、次のように整理されるのでありました。
• 市場×計画 - 市場に向けた戦略づくり - 顧客を徹底的に細分化して顧客の生態に詳しくなる。
• 組織×計画 - 戦略に合わせた組織づくり - ブランド単位に企業の活動を集約しブランド資産を構築することに活動を集約する。
• 組織×マネジメント - 組織の情報リテラシーの確立 - 市場や顧客の情報を徹底的に集約することのできるデータベース・情報機能を設け、市場機能を補完する。
• 市場×マネジメント - 市場と組織の接点のマネジメント - 生活局面にさらに入り込んでいくために柔軟にプロセスを設計し、役割分担しながら組織的に動く。

そしてそれをさらに、次のように、施策を推進するための組織開発・人材開発の要件に展開することができます。
• 顧客セグメントを徹底的に細分化し、一人一人が特定の顧客セグメントのプロとなる。
• ブランド単位で一つの会社のように組織を運営する。ブランド単位で経営人材を育成する。
• データベース・情報センタは共通機能として集約する。ラインから独立した専門職能組織を作る。
• 役割を分化させながら連携する。プロジェクトチームで効果的に動くことのできるスキル/コンピテンシーを重視する。

「一人一人のプロフェッショナル性の強調」、「経営人材育成」、「職能専門組織の設置」、「プロジェクト型の組織運営」といった組織開発・人材開発のテーマが、ビジネス課題との関係でどのような位置づけになるのか、ということが明確になることがおわかりいただけると思います。このような整理の仕方により、人材が備えるべき様々な方向性の能力を突き詰めて表現することができ、かつ、相反する能力が組織の中でどのように組合わされるのかということも、次の図のように明確になります。単に漫然と「当社は市場志向の企業を目指すので従業員も市場志向の行動をとって欲しい」と宣言することとは大違いと言えます。

以上、「マーケティング主導の企業」を実現するための課題を、ビジネス-組織-人材を一貫通貫させて整理できることを示しましたが、マーケティングでなく「イノベーション主導の企業」を実現するための課題であっても、例えば下図のように同じように整理することができます。

さらに、このような切り口を用いて、ビジネスから出発して人間のパーソナリティといった奥底まで切り込むことができないかどうか、見てみることにしましょう。人のパーソナリティタイプを判定する診断としてMBTIという診断がよく知られています。「内向的か(I)外向的か(E)」、「感覚的か(S)直感的か(N)」、「思索的か(T)感情的か(F)」、「断定的か(J)受容的か(P)」という4つの軸でパーソナリティを16のタイプに分けるもので、進路カウンセリングに用いられることも多くあります。例えば、「INTJ型は独立心が強く理屈っぽいので科学者やエンジニアに向いている」等です。しかし、そのようなタイプ分類だけでは占いのようなもので、ビジネスモデルやビジネスプロセスの見直しとともに求められる人材像がどのように変わってくるのかという検討に用いることができるものではありません。

そこで、4象限フレームワークを用いて分類をより深いところから理解し、ビジネスの議論とパーソナリティの議論を結びつけることを考えます。MBTIパーソナリティ分類を次のように要約表現したらいかがでしょうか?それぞれのパーソナリティが企業の中でどのような役回りを果たすために貢献するのか、ということが一目でわかることに気づかれると思います。このように、自社の職種や役割の特徴とパーソナリティとを関連づける見方を確立することで、これまで十分活用されずにいたMBTI診断データ等も活用しながら、人材の適材適所をより客観的に議論することができるようになります。

さて、以上のように「メタ・フレームワーク」を縦横無人に駆使して、ビジネスの議論や組織の議論、人材の議論を統合していく時、例えば「当社の現場主義の理念が求めるのは、感覚的なパーソナリティを持つ人材である」等々、直感的にあてはめていくのは危険です。人によって見方が違ったりもしますし、また企業によってビジネスの場面やそこで求められる内容は変わってくるのが当然だからです。「このように職種を体系化することにします。そして職種ごとにこのように優先コンピテンシーを割り当てます。そしてこのようなパーソナリティ特性の人を優先的に配置します。」・・・と強力な仮説を形成できるのはよいことですが、それを裏付けるものがなければ、異論が出てきた時にそこで検討はストップしてしまいます。

そこで、仮説を実証するためのデータが必要になってきます。どの行動とどの行動が近い関係にあるのか?どの能力を発揮している人は他のどの能力を発揮する傾向があるのか?どのような隠れた能力因子がそこには存在するのか?それは、能力のタイプは大きく4象限で整理できるという仮説と合致しているのか?4象限のそれぞれは、自社においてはどのような意味内容となるのか?そして、どの職種において力を発揮している人が、どのような能力軸において力を発揮しているのか?・・・等々実証的に検証する必要があるのです。このために必要な統計手法は、「多変量解析手法」と呼ばれるジャンルの手法になります。社会学、マーケティング等で広く使われる手法ですが、人事の分野での活用はまだ始まったばかりであると言えます。その効果的な活用方法を次回はご紹介したいと思います。

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プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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