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最新人材マネジメント情報

究極のフィードバック=生体情報の活用

先月7月12日の投稿「メタマネジメント」に関して、その中でご紹介した「四象限のメタフレームワーク」の検証を試み、改善を行った結果をお知らせしなければならないのですが、少々お待ちください。で、今回は、日本発、日本ならではの最新人材マネジメント情報です。ただし、「日本的経営」とかそういう話ではありません。ハイテクの話です。

HRアドバンテージが360度フィードバックをサービスの一つとしている理由は、360度フィードバックという方法そのものへの愛もさることながら、組織や人に関する情報を取得する方法は今後とも多面アンケートが中心になると考えるからです。

しかし、アンケートなどというまどろっこしい方法をとらなくても組織や人の状態について情報をとれる時代になるのではないか、とは考えてしまうところです。社員のメール情報を全部解析して、誰が誰とコンタクトしているか分析するとか。IDカードにGPSつけて、いつ出勤したか、どう移動したか、いつ誰と合ったか、分析するとか。脳波や心電図を常に計測して分析するとか。そしてそれを業績情報と照らし合わせて高業績者モデルを作るとか。プライバシーの完全消失、ということはさておくとして、そのような情報収集・分析を通じて何がわかりそうでしょうか/わからなさそうでしょうか?

・・・そのようなことを考えたことがある方は多いと思いますが、日立製作所の中央研究所が、いよいよそのような試みの実証研究、一部サービス化に乗り出しています。日立製作所は、ご存じの通り、粉のようなICチップ「ミューチップ」を開発したことで名高く、センサーとユビキタス技術を活用した社会インフラ構築に成長の道筋を見出しています。センサーを使った「情報収集・分析」と「人材・組織開発」というのは、日本ならではの最新人材マネジメント手法になる可能性がありそうです。

センサーを使った組織開発支援ツールは「ビジネス顕微鏡」といってこれは商用サービス化も始められているようです。そして人材開発支援ツールは「ライフ顕微鏡」といい、そちらはまだ商用サービス化はまだの模様ですが、「日立評論」にツールの概要が(ライフ顕微鏡:20人のライフタペストリーが語る人とセンサとITの未来)、そして情報処理学会誌のVol.50 No.7にさらに進んだその活用イメージが(ライフログ経験:センサが人生を変える(矢野和男))説明されています。

「ライフ顕微鏡」とはどのようなものかというと、「腕時計型センサネット端末を用いて、人の活動に伴う3軸加速度・脈波・皮膚温度の値それぞれの変化を24時間・365日連続して収集・解析し、活用する」というものなのですが、それを医療等の目的のみならず人材開発のためにどのように使うか、ということに関して、矢野和男氏の「ライフログ経験:センサが人生を変える」の提案は驚くべきものでした。この方向性に関心がある方は、情報処理学会誌の記事をダウンロードしてお読みになられることをお勧めします。

センサーからとったデータをどのように使うのでしょうか?そこからどのようなメッセージを引き出すのでしょうか?どのように人材開発に役立てるのでしょうか?運動不足解消、寝不足解消、移動のムダ解消、全般的なストレス軽減・・・等、フィジカルな生活改善のために用いるのならばわかります。しかし、矢野氏の論考では、さらに一歩も二歩も踏み込んだアプローチが提案されています。そして、そのアプローチを開発するにあたっては、人材マネジメント界でも人気の高い、フロー理論で有名なチクセント・ミハイ教授とも共同研究をしているというのです。そしてその効果について、矢野氏は次のように断言されています。「私の人生は、この技術により、以前とはまったく変わってしまった。1日の密度が数倍に凝縮された感じである。・・・行動データは、人にはできない繊細さで、微妙な状況をくみ取り、きめ細かく人生の、組織の、社会の経験を豊かにし、成長を加速する。」

その内容を私なりに言い換えると、次のようになります。・・・人間は、頭で意識している以上のことを知っています。今やっていることが適切なのか、不適切なのか、どのような帰結に至りうるのか、どのような方向に転換を図った方がよいのか、漠然とは感じています。その漠然とした感じをセンサーで定量化、分類し、どのような「感じ」の時にはどのようなことに気をつけなければならないのか、データベースから予め分類されたメッセージを導き出し、自分の判断と照らし合わせながら、自分の判断力を磨いていくのです。

そのメッセージは64通り、それが実に、易の64卦を参考にしているというから驚きます。その時・その瞬間の心身の状況の変化・方向性の分類、それに対するメッセージの雛型として、易が優れているというわけです。その64卦(=2の6乗)と、センサーからとられた6つの行動特徴量(=「緊張」「安静」「集中」「会話」「歩行」「外出」)とを結びつけることで、「易」を科学化したとも言えます。日常の心身の「感じ」や「雰囲気」の微細な変化に神経を尖らせて、それをシンボルに置換えて一喜一憂する占い好きの日本人。その領域の科学化に初めて成功したアプリケーションとして、東洋発の一大アプリケーション領域になるかもしれませんね。

ただ、センサの助けを借りながらその時々の状況判断の品質を高めようとすることが、「勘」を磨くことになるのか、逆に、センサ頼みになってしまって「勘」が衰えてしまう危険があるのか、どちらの可能性もあるように思います。人材開発の視点からは、センサーを使って「勘」を磨くためには、まずは自分でリスクをとることが前提になりそうです。リスクをとっていない人がセンサーをつけて日々の意思決定のトレーニングをしても意味があまりなさそうです。逆に、リスクをとっていれば、センサーがなくても自分の心身の状態に敏感になり、勘が研ぎ澄まされ、経験と学習は進むのではないかとも考えられます。世界的な投資/投機家として有名なジョージ・ソロスは、自分の投資ポジションの良し悪しを「背中の痛み」である程度判断することができたそうです。HRアドバンテージの代表の相原は、エレベータに乗る時にはいつもどのエレベータが最初に来るか密かに賭けて、勘を磨くトレーニングをしているそうです。

今後の動向に注目したいと思います。

プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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