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最新人材マネジメント情報

「メタ」マネジメントの時代に突入か

タレント・マネジメントが人事に求めるもの

モノやサービスのあり方が急激に変化しています。普通のモノや情報は商品としてはほとんどタダ、「地球環境への価値」が商品性の鍵となったり、商品そのものよりも商品の周りに「コミュニティ」を形成できるかどうかが鍵となったり、それ自体で一定の期待を生じさせるブランドがないと始まらなかったり。そのような中で、組織や人に求められるものも、明らかに変ってきていると感じられます。

それが人材マネジメントにどのように影響するかというと、おそらく、「タレント・マネジメント」という言葉に集約されるのでしょう。その定義が何か、ということは必ずしも明確ではありませんが、いずれにしても、本当に価値を創造できる才能を育てていく必要がある、しかも、現在経営幹部や管理職になっている人達が生み出してきたような価値よりももっと高いレベル、または新しい次元の価値を組織メンバーが生み出していけるようにする必要がある。つまり、これまでのマネジメントだとか、育成だとか、そういう言葉では言い表せないようなことを実現していかなければならない、ということなわけです。

しかも、タレント(=才能ある人材)をアトラクション&リテンション(=惹きつけ、組織に居続けてもらう)というような、タレントだのみの発想ではだめで、組織としてタレントを見出していけるような、しかもタレントを増幅して何倍にも活用するようなことを、考えなければならない。一人一人の特徴をとらえ、限界まで強みを発揮してもらうとともに、一人一人の才能をを組み合わせたり、長期的に大きな価値を生み出せるよういろいろなことを経験させたり、一方では燃え尽きないようにケアしたり、そうすると、マネージャーは、一人一人の個性や長期的なポテンシャルへの洞察を深めながら、一人一人のその時その時の状態をも見ていかなければならなかったり、それらの組み合わせを考えたり、考えなければならないことが実に多くなります。


多様な対象を扱う枠組みはかえってシンプルに

そうすると、マネジメントの考え方としては逆に、ものすごくシンプルしていく必要がある、ということが言えます。扱う対象が多様だからこそ、それらの価値についてのコミュニケーション手段はシンプルにしていく必要があるわけです。

数え切れない多様な商品群を、数え切れない人達が、それぞれの多様な価値観でやりとりするために、「お金」という唯一の尺度を設定することで市場が生まれ、それが最強の資源配分装置として機能するようなものです。ですから、何につけても「Show Me The Money !」、お金一辺倒、というのも、実はタレントマネジメントのため、と言えないこともないかもしれません。どのみち一人の上司の経験や知識や価値感には収まりきれないものを扱わなければならないのですから、へたに上司やマネージャーの価値感で判断されるよりも、かえって自由度が高くていいかもしれません。

・・・という議論は一つの極論ですが、多様性に立ち向かおうと立場を決めるとともに、議論の軸を思い切りシンプルにする必要があります。そのキーワードが、「メタ」の視点に立つということです。「メタ」というのはどういうことか・・・「ある対象を記述したものがあり、さらにそれを対象として記述するものを、メタな○○、あるいは単にメタ○○と呼ぶ。言語を記述する言語 - メタ言語、文法を記述する文法 - メタ文法、理論を解釈するための理論 - メタ理論、自己の認知を認知すること - メタ認知」(ウィキペディアより)。メタ分析という言葉があります。過去の研究を渉猟・統合して、一つの研究にすることです。そのためには言うまでもなく、網をかけて統合するための枠組み(フレームワーク)がなければなりません。

人材に関わる議論は、あまりにも沢山の言葉でなされすぎてきたと言えます。もとはと言えば、人を評価する軸は「組織への忠誠」で足りて、そして最終的には「お金を生み出せるか」というたった一つの軸に行き着くとしても、「人材マネジメント」を始めるにあたって、「個々の成果責任やスキルやコンピテンシー」を把握する必要が出てきて、しかし「人」の測定が科学にはなっていないため、企業の数だけ、論者の数だけ、様々な測定軸(=コンピテンシーを表す言葉)で議論されるようになってしまいました。

そうすると、その次の段階としては、どのような表現が出てきても、それらの位置づけを理解し、統合・整理できる枠組みを持つ必要がある、ということになります。たとえば、「その人材の価値感がどうか」「その人材の業績はどうか」という2軸の中に、人材に関わるこれまでの議論を集約し、2軸のマトリクスの中に一人一人をまずはマッピングする、ということなど、「軸を整理する軸」を持つということですので、メタな議論ということになります。


変化するマネージャー人材像をとらえる

そのような中、まずは組織の要であるミドルマネージャーに焦点を当てて、現在ミドルマネージャーに求められる要件が著しく変化している中、ミドルマネージャーの新しい人材像を定義しよう、という研究会をHRアドバンテージでは行ってきました。一橋大学大学院の守島基博教授にアドバイサーをお引き受けいただき、第一線で活躍される人事マネジャーの方にブレーンストーミングにご協力いただき、今現在ミドルマネージャーに求められる行動要件を洗い出しました。そしてそれを整理するにあたり、整理の「軸」が必要になりました。能力因子論的には6つの軸で語るとシンプルかつ多様性を表現できることがわかっているため、その線で行くことも考えたのですが、議論を経て、最終的には、もっとシンプルな4象限でのまとめ方に至りました。行動を分類するメタ分類として、縦軸として時間軸、横軸としてリソースの軸、の2軸を設定して、マネージャーの行動特性を4象限で整理することにしたのです。

middle manager

この2軸による分類の何が優れているかというと、我々の多くが無意識に脳裏に持ち、共有し、用いているイメージ空間に合っていることです。すなわち、向こう側が未来、手前が現在。右手にはロジックや仕組み、左手には人間(右脳と左脳にも通じています)。これによって、ビジネスの中で生み出す成果を仕分けるわけですが、それはそのまま、人材能力(=コンピテンシー)の分類ともぴたりと重なり合います。成果の仕訳図であるとともに、能力タイプの仕訳図にもなります。この一枚だけで、求められる成果も、そのための能力も語ることができます。これは、ビジネスサイクルが大きく4つのフェーズに分かれ、それぞれのフェーズごとに求められる人材も異なる、という、イノベーションのキャズムで有名なジェフリー・ムーアの議論にも対応します。つまり、「成果」も「能力」も「事業」も扱うことのできる、メタフレームワークがこれで得られたわけです。

この4象限の雛型になったのは、人事部門の役割論として有名なDavid Ulrich の議論です。David Ulrich は、”Human Resource Champion” (邦訳題名「MBAの人材戦略」)という、1997年に出版された本の中で、人事部門の役割を次の4象限で分類し、人事部門の役割の拡張の道筋を示しました。

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決して新しい議論ではありませんが、この議論は2009年の現在、日本の多くの大手企業の人事部門で参照されていると感じます。最近、2、3社ならぬ企業実務家の方から、「ウルリッチのHuman Resource Champion」の勉強会をしています、とお伺いしました。それはやはり、日本企業の人事部門が、この10年間人事改革を行ってきたことを俯瞰し、新しい段階に踏み出すための枠組みが求められているからだと考えられます。そしてそのためにも、人事部門のミッションを整理し、見直す必要があるからだと考えられます。そして、この4象限のフレームワークが有効なのは、人事部門の役割整理に限ったことではない、マネージャー一般の役割整理にも有効である、と、マネージャーの人材像整理に使うことにしたわけです。


メタな視点の時代へ

よい着眼点を得ることができた、と喜んでいたら、先日配信されてきたハーバード・ビジネス・レビューのPodCastを聞いてびっくりしました。Harvard Business IdeaCast の148号なのですが、本家本元のDavid Ulrichがまさに、リーダーシップの「統合理論」を打ち出しており、かつての人事部門の役割論を、リーダーの要件論に敷衍していました。PodCastの音声版の中で、新しいリーダーシップ論の目的が、新しいものを付け加えるというよりも、これまで星の数ほど出されてきたリーダー論を俯瞰、統合することを意図するものであり、一種の「メタ分析」である、という言い方を明確にしています。そう、人材論は今、これまでの議論を俯瞰し、骨太の枠組みの中に組み込んでしまう、「メタ分析」の時代に差し掛かったのではないでしょうか。 

 

  The Leadership Code: Five Rules to Lead by
Harvard Business School Pr
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(追記 2009/08/05)

ここで述べている4象限分類を検証することも一つの目的として、HRアドバンテージでは約10社の企業様にご協力をいただいて調査を行い、このたび集計・分析が完了したところですが、その結果、大ウルリッチ先生の説に異論を出すことになりますが、この枠組みに修正を加えた方が良いということが判明しています。この枠組みについては次のような懸念が感じられなくはなかったところ、代替案は丁度それを解消する方法ともなっています。この枠組みの活用を考えられていらっしゃる方はお問い合わせください。
・「人系」と「プロセス系」とを対立項とすることは、「人間調整系に特化」または「プロセス系に特化」することを容認することにならないか?
・「現在の成果」「将来の成果」とを対立項とすることは、「全員が改善・イノベーションに従事すべきこと」「素早く少しずつ成果を産み出しながら大きく育てる必要性が強くなっていること」と合致しないのではないか?

プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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