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人材育成の破壊的イノベーション

右に紹介している本は、破壊的イノベーション理論の提唱者のクレイトン・クリステンセン教授が、同理論を学校教育分野に当てはめ、教育改革に対して提言を行っているものです。そのエッセンスは次のようなものとなっています。

【1】生徒がうまく学べない根本原因に取り組んだ学校改革はこれまで少ない。だからチャンスがある。
【2】正面から現行教育体制を批判するのではなく、現行教育体制が重きを置いていない領域を狙った、破壊的イノベーションの方法を用いることが効果的と考えられる。
【3】想定される破壊的イノベーションの内容は、一人一人に合った学び方は異なることを認識し、一人一人に合った学び方を提供する仕組みだ。ITがその道具となる。
【4】独自開発した教材を提供し合うオンラインのネットワークが、そのような破壊的イノベーションを実現する場になる可能性が高い。
【5】そのような新しい教育方法に基づく学校は、これまでの学校と切り離して、実験校として活用すべき。

一言で言えば、「これまでのような一枚岩の教育ではなく、一人一人の適性に合った能力開発ができるようにする」ということだと言えるでしょう。書籍の最初では、知性にも様々な方向性の知性があり、一人一人が得意とする方向性は異なる、という、ハワード・ガードナーによる「多元的知能」の理論が紹介されています。

そのゴールイメージは、レンズーリらが提唱してきた、個性や才能の方向性に合わせて、クラスや学年の壁を越えた学校内コミュニティを作り、その課外授業の比率を高めていく「総合学習」の概念とも重なりますが、これまでの教育体制を「破壊」してくための戦略的なアプローチについて企業戦略論を援用して、関係者に改革を呼びかけているところに、面白さがあると言えます。

 

さて同じことが、企業内人材育成においても、まさに求められていると思います。私どもも、「戦略人材マネジメント」の概念とともに、職種や専門性に応じた、育成方法、評価、処遇、キャリアパスを提供しようという、職種別人事を提案してきましたが、それは労働市場や人事部門のあり方にも及ぶため、人事の主流にはなかなかなりませんでした。しかしながら、職種別人事の必要性は、人材育成の文脈の中で、徐々に高まっているように思われます。というのも、20年かけて、ジョブローテーションを繰り返しながら企業人としての能力を成熟させていく、ということでは、いよいよ間に合わなくなっているからです。

これまでに日本企業の強さの源泉であったとも言われる、ジェネラリストとしての中堅マネージャー(課長層)、そして製造やサービスの一線を担うオペレーション人材のスキルやモラールをさらに高めつつ、それに加えて、プロフェッショナル性の高い、グローバルビジネスマネージャーと、製品アーキテクトと、コンサルティング営業とが同時に必要になってきている、というのが多くの企業の状況ではないでしょうか。それに応じて、従業員の側でも、マネージャーを目指すのか、技術の目利きを目指すのか、それとも顧客密着を目指すのか、早い段階でキャリアの積み方、勝負の仕方を意思決定する必要性が強くなっています。そのためには、自分の適性とともに、自らの強みを伸ばす必勝パターンを早い段階で見極める必要があります。

国の競争力を高めるために学校教育の改革が問われており、そこでは、多元的な人材育成が脚光を浴び始めているのと、全く同じです。そこで、「教育×破壊的イノベーション」を企業内人材育成に当てはめる時に、人材育成推進者がまず押さえるべきものは何でしょうか?その仕組みのOSに当たるものは何でしょうか?360度評価・フィードバックの基盤が、まさにOSにあたるものと考えています。それは、人材像を定義し、人材像とのマッチ度を測定する仕組みであり、次のような機能を果たすことが想定されます。
【1】人材像を記述する共通言語として、人材タイプをまたがる企業としての共通人材特性や、個々の人材タイプの特性を管理する。
【2】実際に測定・フィードバックを繰り返しながら、人材タイプの特徴を際だたせたり、ブレンドしたりしながら、組織が求める人材像を益々明らかにする。
【3】同時に、一人一人の人材タイプを診断し、一人一人が特徴を伸ばしたり、人材タイプを組み合わせて価値を出すことを支援する。

一枚岩の人材像モデルを前提にした伝統的な「階層別研修」を乗り越えて、今こそ、人材育成の破壊的イノベーションを考える時ではないでしょうか。

関連書籍

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  • タイトル:教育×破壊的イノベーション
  • 著者:クレイトン・クリステンセン他
  • 出版社:翔泳社
  • 出版日:2008/11/19

プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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