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6ファクターアセスメント(2):人事/教育/カウンセリング分野を横断して考える

 ところで本コーナーの名前は「最新人材マネジメント情報」ですが、いきなりホランドのパーソナリティ/適職診断という、1960年台に最初の型が提唱された何とも伝統的な理論を持ってきてしまいました! 今回は、人事や教育やカウンセリングの分野を横断して考えよう、ということを述べるのですが、「分野横断的な統合こそ最新のトレンド」ということで、ご紹介する個々のものは伝統的なものでも、全体としては「最新情報」なのだとご理解いただければ幸いです。

 人事/教育/職業カウンセリングの各分野はそれぞれ独立した分野であり、お互いの間にほとんど交流はありませんでした。しかしいずれも、個人を特徴づける性格や能力のファクター(因子)に着目し、個々人の適性や志向性を見極めた上で、能力を伸ばし、活用することをめざしています。その舞台が、企業/学校/一般労働市場と、異なるだけで、目指すところは一緒なのです。 そして、実際、各分野における理論は、お互いによく似ています。個人を特徴づける性格や能力のファクター(因子)に関する代表的な理論を、企業人事で使われるもの、教育分野で使われるもの、一般労働市場における職業カウンセリングで使われるものを問わず、概観してみましょう。

◆  心理学のパーソナリティ理論・・・パーソナリティの分類は古くは古代ギリシャのヒポクラテスの四体液説に由来するそうですが、心理学の分野ではパーソナリティは次の5つの因子(=ビッグファイブと呼ばれるとのこと)によって説明できるというのがコンセンサスの一つであると言われます。
  ・Neuroticism(神経症傾向、情緒不安定性)
  ・Extraversion(外向性)
  ・Openness to Experience(開放性、知性)
  ・Agreeableness(調和性)
  ・Conscentiousness(勤勉性)
  (出典:ウィキペディアhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%A7%E6%A0%BC

◆ ホランドのパーソナリティ理論・・・職業カウンセラーであったジョン・ホランドによって1960年代に最初の提案がなされ、その後、適職マッチングの理論として最も普及するようになった理論で、前回紹介したものです。パーソナリティについての理論であると言われますが、上記のビッグファイブ因子との関連は明らかではなく、ジョン・ホランドが実践の中で独自に抽出したファクターと考えられます。この理論のユニークなところは、因子がお互いに独立したものとされておらず、因子間の「距離」が「正六角形」で表現されており、「距離」を活用して複数因子の組み合わせや因子間の関係を考慮に入れることによって、適性や志向性を表現、判断します。
  ・現実的 (Realistic)
  ・探究的 (Investigating)
  ・芸術的 (Artistic)
  ・社会的 (Social)
  ・積極的 (Enterprising)
  ・慣習的 (Conventional)
  (出典:Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Holland_Codes

◆ キャリアアンカー理論・・・企業文化や組織開発プロセスの研究で有名なマサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン博士が提唱した、良いキャリアを築くために本人が認識すべき、自らの譲れない価値観や欲求のことで、主要なものは5つあるとされます。
  ・技術的・職能的能力 (TF)
  ・管理能力 (MC)
  ・保障と安定 (Se)
  ・創造性 (Cr)
  ・自律と独立 (Au)
  (出典:『キャリア・ダイナミックス』エドガー・H・シャイン著 白桃書房)

◆ コンピテンシー理論(マクレランドによる)・・・コンピテンシーの理論は、臨床心理学や職業カウンセリングにおけるパーソナリティの研究とは別の文脈で登場・発展し、企業人事の分野で広く用いられるようになりました。コンピテンシーはパーソナリティと似ていますが、コンピテンシーという場合には、人の内面に隠れたパーソナリティのみならず、それがもう少し、目に見える行動として顕在化した特性に焦点を当てることが多くなっています。提唱者であるマクレランド博士、及びその後継者たちが用いるコンピテンシーファクターは約20項目以上ありますが、通常次の6つにグルーピングされています。
  ・達成とアクション (Achievement and Action)
  ・支援と人的サービス (Helping and Human Service)
  ・インパクトと影響力 (The Impact and Influence)
  ・マネジメント・コンピテンシー (Managerial)
  ・認知コンピテンシー (Cognitive)
  ・個人としての成熟性 (Personal Effectiveness)
  (出典:『コンピテンシー・マネジメントの展開』スペンサー&スペンサー著 生産性出版)

◆ コンピテンシー理論(マーサー社による)・・・コンピテンシーの理論を踏襲しつつ、日本のマーサー社で開発されたものです(開発にあたったメンバーは大滝、相原、南雲、舞田、佐々木など)。20項目以上のコンピテンシーファクターを整理するために、分野と次元という2軸で管理していますが、それによるわかりやすさの反面、使い方のむずかしさもあります。HRアドバンテージでも用いているものです。
  ・自己に関わるコンピテンシー
  ・対人 〃
  ・成果 〃
  ・手順 〃
  ・論理 〃
  ・情報 〃
  ・時間 〃
  (出典:『コンピテンシー活用の実際』相原孝夫著)

◆ 多重知能理論・・・米ハーバード大の教育学教授のハワード・ガードナーが提唱する、「知能はIQだけではない」「各人の才能の方向性に合わせた教育がなされるべき」という主張を支える理論です。次の8つの知能が提唱されています。
  ・言語的知能
  ・論理数学的知能
  ・空間的知能
  ・音楽的知能
  ・運動的知能
  ・社会的知能
  ・博物的知能
  ・実存的知能
  (出典:ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A5%E8%83%BD など)



 ハワード・ガードナーは昨年さらに、未来を切り開くにあたって今後重要になる「5つのマインド」というものを提唱しました("Five minds for the future")。これは、上記知能を使いこなすインフラに相当する部分にあたるようです。ホットな話題らしく、講演ビデオなどもウェブで見ることができます。
  ・専門分野で訓練されたマインド
  ・分野を総合するマインド
  ・創造するマインド
  ・相手を尊重するマインド
  ・倫理的なマインド

◆ 思考スタイルの理論・・・企業人事の世界でも有名になったEQ(emotional quality)の提唱者の一人でもある、米イェール大の教育心理学教授ロバート・D・スターンバーグが提唱する、人によって異なる思考スタイルに関する理論で、自己管理の仕方は政府の形態になぞらえることができるとの見地から、個人が持つ思考スタイルとそれによる個人のタイプを、次のように分類しています。
  ・立法的人間 (Legislative)
  ・行政的人間 (Executive)
  ・司法的人間 (Judicial)
  ・君主制人間(monarchic)
  ・階層制人間(hierarchic)
  ・寡頭制人間(oligarchic)
  ・無政府制人間(anarchic)
  ・・・

 その他にも、上に少し触れたEQ(Emotional Quality)のモデル、あるいは、米GEの能力開発責任者だったネッド・ハーマンが提唱した、脳の前頭葉と後頭葉、右脳と左脳のアナロジーによって、人間の能力をタイプ分けする「全能モデル」など、いろいろなものがあります。

 これら全て、要するに「能力因子」ということで、ウィキペディアにも「能力因子」という項目があります。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%BD%E5%8A%9B%E5%9B%A0%E5%AD%90

 また、様々な理論とその教育への活かし方について文献をサーベイしたものとして、次のような論文を参照することもできます。『学習スタイルの概念と理論 ― 欧米の研究から学ぶ』青木久美子 http://www.nime.ac.jp/journal/318kenkyutenbou01.pdf、『学習スタイルの概念と理論及び それに基づく測定方法』青木久美子 http://www.nime.ac.jp/journal/05-11.pdf

 さて、それらの理論はいずれも、「なぜその理論でなければならないのか」「なぜその理論は正しいのか」という根拠が明確なものではありません。最初にまず「えいや」とばかりにファクター(因子)が提示され、体液から脳から政府の形態に至るまで様々な外界の対象物に結びつけて、比喩的にその根拠が説明され、その上で、場合によっては統計的な調査によって裏付けがとられている、というのがパターンであると言えるでしょう。統計的な裏付け調査といっても、それぞれの調査の範囲で行われているものですので、たとえば米国での調査結果が日本でもそのまま使えるのか、一般労働市場での調査結果が企業内労働市場でもそのまま使えるのか、といった問いに耐えられるものとは言えません。言ってしまえば、占いと同じようなものです。このようなファクター(因子)のフレームワークはいくらでも作れるのであり、実際コンピテンシーのブームの時には、コンサルティング会社ごとにコンピテンシーのフレームワークが作り出されたと言ってよいほどでした。

 理論がそのようなものであることを踏まえつつ、人の適性や志向性を特徴づける性格/能力/思考の特性は確かに存在し、それを認識することによって、人それぞれの適性や志向性を正しく把握することが、企業の人材活用の視点からも、個人のキャリア形成の視点からも重要である・・・ということに異論を差し挟む人はいないでしょう。実務的な見地から、人間の性格、特性、思考等のタイプ分類を、どのように行ったらいいでしょうか?そのために、様々な理論の有用性をどのように判断したらよいのでしょうか?それを次回考察したいと思います。

プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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