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6ファクターアセスメント(1):人と組織のアセスメントのオープンスタンダードをめざして

  人や組織の特徴を明らかにするアセスメントには、様々な種類のものがあります。それらは通常、「独自の心理学理論」や「蓄積されたデータベース」に基づいており、問診(アンケート)の結果、人や組織の「隠れた特性」を浮かび上がらせるものです。それらはやってみると、だいたいにおいてそれなりに「当たる」ものですが、分析の切り口や、特徴を表現するラベルは、アセスメントによってそれぞれ微妙に違います。そして、なぜそのような結果が出るのかという「診断のロジック」は隠されているのが通常です。もっとも、良心的なアセスメントの中には、ロジックは公開していないとはいえ診断プログラムの統計的な妥当性についてのレポートを公開しているものもありますが(StrengthsFinderなど)。

さて、企業内外に目を配って人と組織の適材適所を推進したい立場からここで困ることは、アセスメントによって切り口がお互いに異なること、診断ロジックが公開されていないこと、そしてお金がかかることです。人材・労働市場における商品仕様を判断するためのアセスメントが、企業や業界の垣根を超えて誰もが使えるものにならないのでは、いつまでも、人材・労働市場の整備は進みません。

なぜ、独自の様々なアセスメントが林立するのかと言えば、人や組織といった対象が「複雑系」であるために、その特性を、明確に定義できる尺度で定量的に測定することが難しいからです。最初から測定尺度を決めて絶対値で評価することは難しく、様々な現象の背後に働いている「因子=ファクター」を想定し、「論理的」とか「粘り強い」とか「自由闊達」とか、シンボリックに表現するしかないわけです。

皆が手軽に使うことができる、客観的なアセスメント基準/ロジックはできないものでしょうか?それによって人の特徴、仕事の特徴、組織の特徴を客観的に記述し、適材適所を判断する上での共通言語になるようなものを作ることは無理でしょうか?良い方法はないのでしょうか?

上述の理由で完璧な方法ではありませんが、それに近い方法ならばあります。それは人や仕事の特徴を表す「因子=ファクター」の数をシンプルにすることです。ファクターを20も30も挙げるから、「人を形容する言葉なら何でもあり」になってしまうのです。人や仕事の特徴を表現するために、「分析力」「発想力」「徹底力」「柔軟性」「慎重性」「交渉力」「プレゼン力」・・・というように20にも30にもなる項目を並べたてても、人によって解釈がまちまちになり、人と仕事の適材適所を診断するための共通言語になりません。また、その上にさらに、数えたてると数百、数千項目にもなってしまうスキル項目を、たとえば「TOEICXXX点」「EXCEL関数ができる」「EXCELマクロができる」「P/Lが理解できる」「B/Sが理解できる」・・・というように積み重ねていったら、そしてそこにさらに業務経験情報を加えていったら、データの整備自体不可能になってしまうでしょう。

そこで例えば、「人や仕事の特徴を4つのファクターで表す」と決めてしまうと、かえって明快になります。「人や仕事の特徴を、お互いにできるだけ独立性のある4つのファクターで表現する」とした場合、4つのファクターがどのようなファクターになるかはほとんど決まってきます。ほとんどの場合、次のような4ファクターか、せいぜいそれを少し変形したものに落ち着いてくるのです。 

    論理的
        |
きっちり―──  発想重視
         |
    人間的

そして、何よりもマッチングの議論がしやすくなります。4つのファクターを使うだけで、日頃、4つの血液型が人の性格を表現する会話の中で活発に用いられるように、かなりの議論ができます。(ちなみに、血液型と性格との関連を示す統計的な証明はないそうです。それでもあれだけ話が盛り上がるのは驚くべきことです。)例えば、プロジェクトのサブリーダーを一人連れてこなければならないとします。候補者が3名いるとしたら、その3名を上記のマトリクスの中に位置づけ、プロジェクトに現在求められる人材の要件と照らし合わせてみるだけで、判断はおおいに絞り込めるでしょう。(もちろんこれだけで全ての判断をするのではなく、最終的には業務経験や保有スキルも考慮に入れることはもちろんですが、判断の順序が肝心だということです。)

実は、人と仕事のマッチングのために何十年も前に考案され、今なお、簡便かつ信頼性があるものとして用いられているアセスメント理論があります。職業カウンセリングの分野で長い間用いられている、ジョン・L・ホランドの適職診断の理論がそれです。それは、人や仕事の性質を、次の6つのファクターによって性格づけし、人と仕事の合う/合わないをマッチングするもので、そのロジックには何の秘密もなく、診断テストも、自分に合うもの/合わないものを答えていくだけのシンプルなものです。 

・現実的 (Realistic) 
・探究的 (Investigating) 
・芸術的 (Artistic) 
・社会的 (Social) 
・積極的 (Enterprising)
・慣習的 (Conventional) 

この理論のポイントは、多すぎず少なすぎない、6ファクターに基づく診断の使いやすさです。人や仕事の特徴を、ファクター間のお互いの距離が丁度6角形になる6つのファクターで説明すると実にうまくできるのです。6つのファクターから該当する2つないし3つを選んで組み合わせれば、2つ選ぶだけでも6×5=30通りと、かなり細かい表現もできます。これまでの企業人事におけるコンピテンシーのセオリーで用いられていた、20~30項目に及ぶコンピテンシーファクターも、実にうまく6つのファクターに集約できることがわかりました。 

(図)マーサーのコンピテンシーと6ファクターの対応関係

アセスメントモデル
実績あるマーサーのコンピテンシーモデルを、米国において適職診断のために最も広く用いられているパーソナリティの6ファクターモデルと融合することで、使い勝手を高めたアセスメントモデルを用います。

<ホランド理論とコンピテンシー>

この考え方は、企業人事の分野や、人材教育の分野に活かされるべきものです。残念ながら、これまで、日本でも米国でも、企業人事の分野、職業カウンセリングの分野、そして教育の分野はお互いにはっきりと分かれていて、人材やノウハウの交流がありませんでした。そして、ホランドの適職診断も一般労働市場を対象に作られたもので、そのままでは企業人事において使えるものではありませんでした。

しかし、ここでのポイントは、6つのファクターに基づいて人と仕事をマッチングするというモデルの有効性です。ホランドの適職診断の理論を参考にしながら、これまでのコンピテンシーアセスメントに少し手を入れるだけで、使い勝手が大幅に高まることがわかってきました。そしてそのようにして出来上がった「人と仕事のマッチングのツール」は、企業人事の世界におけるオープンスタンダードとなるべきものである、という確信が得られるようになりました。引き続いて、アセスメントのオープンスタンダードとして位置づけられるべき6ファクターモデルとその応用例について紹介していきたいと思います。

 

プロフィール

写真:南雲 道朋(なぐも・みちとも)
株式会社HRアドバンテージ取締役
南雲 道朋(なぐも・みちとも)

株式会社HRアドバンテージ取締役。富士通でシステム開発企画、マーサージャパン等の外資系コンサルティング会社で業務改革/マネジメント改革/組織改革/人材開発を横断するプロジェクトの企画・推進を行ってきた。分野を横断するシステム思考の実践を基本姿勢とし、近年は人と組織のデータ活用の仕事に注力している。著書に、『多元的ネットワーク社会の組織と人事』(ファーストプレス)、『チームを活性化し人材を育てる360度フィードバック』(共著、日本経済新聞社)、『図解戦略人材マネジメント』、『実践Q&A戦略人材マネジメント』(以上共著、東洋経済新報社)がある。

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